SSブログ

老人いこいの家 [三曲あさお]

11月28日(土)麻生区にある「老人いこいの家」で春の海を演奏してきました。
いこいの家春の海.jpg

これはいこいの家を利用する地元の文化サークルや老人会の皆さんが集まり親睦を深める「発表交流会」の出し物として三曲あさおも呼ばれたものです。
実はこのいこい家は今、三曲あさおの練習場所として借りている所なのです。
いこい全景.jpg


4〜5年前よりあさおの会員の数が増え、練習場所として使用していた麻生市民館の和室や視聴覚室では入りきれなくなりました。そこで栗木台にある自治会館に場所を移していたのですが、それでも2〜3曲一度に練習を始めるとお互いの音が交錯して良く聞こえない状態で、練習場所の確保に頭を痛めていました。
そんな時にあさお会員の石橋さんが老人いこいの家を紹介してくれたのです。石橋さんはいこいの家の運営委員としてこの施設利用に関わっており、日曜日は閉館していたいこいの家が試験的に日曜日も利用可能となったことで是非利用をと勧めてくれたのです。
いこいホール.jpgいこい会議室.jpgいこい卓球.jpg

実際に施設を見て、部屋数が多く壁で区切られており、しかも単独で借り切ることが出来るので練習場所としてはこの上ない贅沢な場所でした。老人いこいの家という名称もあさお会員の平均年齢が60歳を超えた今は皆さん抵抗は全くありませんでしたね。

松竹梅.jpg
今は試験的な利用ということで利用料金がまだ設定されておらず、無料というおまけが付いていて三曲あさおにとっては経済的にも願ったりかなったりの場所なのです。そんな訳で交流会のイベントに老人いこいの家利用者代表として演奏を披露してきたという次第です。

いこいの家.jpg

三曲あさお初代会長牧尾さん逝く [三曲あさお]

9月26日三曲あさお初代会長牧尾孝之助さんの通夜がしめやかに執り行われました。

牧尾さん葬儀①.jpg
平成2年結成された三曲あさおですが、牧尾さんは当初発起人として塚本さんや岡崎さんとともに会員募集や会議のとりまとめを指揮し、三曲あさおの基礎を築いていただきました。その後初代会長として第7回の定期演奏会まで会員を導いてこられました。
ユーモアにあふれる言動と暖かな人柄で、流派の異なる雑多なこの団体を包み込まれ、とかく技の優劣や曲の解釈でぎくしゃくしがちな練習や演奏会をまとめてくれました。小柄な体格でいつも笑顔を絶やさぬ牧尾さんの姿が忘れられません。

牧尾さん葬儀②.jpg

第11回定期演奏会までは元気に練習や宴会に参加されておりましたが、体調を崩し入院されてからは手も不自由となり尺八を持つのもままならぬ闘病生活に入りました。ご遺族の話では晩年ベッドで「もう少ししたら片手でも尺八を持って吹くことぐらいはできるかなあ、尺八はどうなっている?しばらく吹いていないからカビが生えているかもな」と三曲への復帰を強く願っていたそうです。

訃報を聞き、葬儀の日時を会員へお知らせしましたが三曲あさおの元会長ということで何とか尺八による献奏を出来ないかと考え、ご遺族の了解を得ました。
曲は第2回研究発表会で演奏した「虚鈴」を選びました。
楽譜.jpg虚鈴③.jpg


当日は5分ほどに簡略化した楽譜をしたため、コピーして持参しました。麻生区栗木台にある林清寺の葬祭場に午後6時到着し、会員とともに通夜の席につきました。焼香が一通り済み、読経が終わった所で尺八を取り出し会員一同整列して虚鈴を牧尾さんの棺に向かって吹奏し始めます。単純なメロディーですが、えも言われぬ静寂感が漂い会員の息がピッタリ合って演奏出来ました。遺影の顔が微笑んだような気がしました。
ご冥福をお祈りいたします。合掌。
虚鈴吹奏①.jpg虚鈴吹奏②.jpg


会長牧尾孝之助、研究発表会挨拶より
第1回研究発表会
「三曲あさおは結成以来満3年経ちました。もしやと期待をこめて投じた一石の波紋が友から友を呼び、異色とも言える邦楽アンサンブルを誕生させました。流派を超えた交流で心と心が触れ合い、お互いに共鳴するこの快いムードを大切にしてこれからも頑張りましょう。」
第4回研究発表会
三曲あさおは自由な雰囲気をモットーにしています。邦楽アンサンブルの魅力に惹かれてグループを組んでからもう7年目です。リーダーにも恵まれコツコツと勉強を続けておりますが、1曲1曲貴重な財産が増えてゆく喜びはまた格別です。1997年を更に実りある年とするよう多いにがんばりましょう。第4回研究発表会にあたり「練習は本番のように、本番は練習のように」釈迦に説法ながらひと言添えてご挨拶といたします。

牧尾さん写真.jpg


竹取りの話 [今日の工房]

竹掘り.jpg

尺八製作には先ず竹材の仕入れが欠かせませんが、ちょうど良いサイズと姿形の竹材は業者から買うと値段が高く、大量に仕入れるためにはまとまった現金も必要なので頭の痛い所です。日本中、竹林はあちこちに見られその気になれば自分で掘ってこれそうな気もします。そこで体験を兼ねて竹掘りに行ってきました。友人の紹介で長野県某所にて先ずは試し堀り。持参した道具はノコギリ、鍬、鉈、金槌などで、根を鉈や鍬で切り、幹を身長くらいの高さで切ってしまいます。そして竹をつかんで左右に体重をかけ竹を揺り倒して掘り出します。
軽井沢竹掘り.jpg軽井沢竹堀②.jpg
堀る手順がまだ慣れなくて根を切るのが上手く行きません。中途半端に根を処理すると根がくっついたままで取れません、時間ばかりかかって汗びっしょり。とにかく掘るのがこんなに重労働とは!
10本くらい掘った所で慣れてきて、掘るのは早くなったけど、疲れで全身がだるくなってきました。竹の生えている所も足場が悪く、斜面が多かったりして体を維持するだけでも体力を奪います。一緒に掘りに来てもらった友人と二人で掘っているとはいえ普段動かさない筋肉総動員のこの作業はお金に換算すればやはり高いものになるのかもと思いました。そして指穴の位置間隔や太さなどちょうど良い竹材をと思うのですがそんな都合の良い竹が生えている訳がありません。きれいな模様の入った堅そうな、きめの細かい肌の竹はそんなに簡単には見つからないんですねえ。いろいろな地域、場所を探さないと宝の山は出てきそうにありません。
軽井沢野仏.jpg

昨年掘った時は時期にもよるのでしょうか、10月でまだ暖かく竹が水を吸っていて掘るには早過ぎました。その後寒くなってからも掘ってみましたが生えている場所によっては土壌に水分が多過ぎたり、寒くてもう凍り付いていたりして竹に皺がよっていたりと竹材としては適さない場所もありました。
竹掘り2.jpg

今年11月は工房のお客様の紹介で同じ長野県の違う場所で掘ってみました。けっこう良い竹材が取れましたが、疲れ方は同じで簡単なものではありませんでしたね。
また、竹材として優良なものはやはり関西や九州のような暖かい地域の方がいいのかな?どなたか良い場所をご存知でしたらお知らせ下さい。

三曲あさおの会員で新百合ケ丘駅近くにお住まいの井上さんから「家の裏山に竹が生えているのですが尺八に使えるかどうかみてもらえますか?」とのお誘いがあり行ってみました。
こんな市街地の真ん中にも真竹はあるんですね。
井上宅竹林.jpg
家を取り囲むように斜面が迫り、竹林が一面に生い茂っています。孟宗竹や篠竹に混ざって真竹がありました。節間隔が短くて短管にはなりますが1尺8寸の寸法がなかなかありません。
でも麻生区周辺にはこんな竹林が多く点在しています。もしかしたら宝の山があるかも.....。
井上宅竹堀②.jpg井上宅長け掘り①.jpg
竹掘りのあとの一杯はまた格別で格別で.......飲み過ぎて翌日は筋肉痛と二日酔いのダブルパンチに一日中のたうち回っておりました。

竹掘り3.jpg


普大寺跡参詣 [尺八雑談]

姪の結婚式があったので、地元浜松へ行きました。
今回の披露宴会場が市内グランドホテル横にある「KURETAKESO」という所と聞き、これは是非見ておかねばという場所を思い出しました。
浜松にその昔あった「普大寺」という虚無僧寺のことです。普大寺は江戸時代、虚無僧寺の総本山として大小120もの寺院を従えていた「一月寺」(千葉県松戸市に現存)の直属の普化宗金先派の本山として1613年に宗慶禅師により浜松に建立されたと記録にあります。
尺八古典本曲のうちでも特に古伝三曲といわれる「虚鈴」「虚空」「霧海虎」をはじめ、全国に伝わる数々の名曲を残した由緒ある寺として虚無僧研究の対象にもなっています。しかし明治に入り普化宗の廃宗に伴い普大寺も廃寺となったようです。
面白いのはその後日談です。廃寺となった寺の本堂は小学校の分校として再利用され、音楽で使われていたアメリカ製のオルガンが故障したことで市内在住の機械器具修理職人「山葉虎楠」に修理の依頼をしました。これがきっかけで後の楽器メーカー「ヤマハ」が誕生することになるのです。
寺の庫裏に工場を作ったことから、この寺跡の高台を「オルガン山」と地元では言い習わし、山に沿った坂を「オルガン坂」といいます。今もその名を記した杭が坂の3カ所に立っています。
オルガン坂写真.jpg

ヤマハの工場が移転した後、味噌蔵としてこの寺跡を買い取った男が醤油や浜納豆の老舗「ヤマヤ」こと鈴木孝作で、寺に残されていた一基の墓を隣の「法林寺」に頼んで移したところから普大寺の形跡が残ることになったのです。その墓を昭和41年、法林寺の住職が復元し普大寺開山の墓として記念碑とともに整備してから広く人々の耳目に触れるようになったということです。

寺の山額.jpg
話が長くなりましたが、そういう訳で結婚披露宴会場のKURETAKESOはその法林寺の真横に位置しているのです。披露宴が始まるまでの短い時間でしたが会場に到着するや早速カメラ片手に現地へ急行です。
寺の本堂前でウロウロしているとご住職が近づいてきたのを幸い、墓の場所を尋ねると親切にも案内してくれました。墓を尋ねる人は結構多いそうです、やっぱり!

墓地全景.jpg

墓地は寺の後方にある小高い丘の上に広がっております。その一番高い所に普大寺開山宗慶禅師の墓はありました。雑草に囲まれてひっそりと鎮座する三基の墓の前に「普化宗普大寺開祖墓」と刻まれた石碑が立っておりました。

普大寺墓①.jpg墓碑.jpg


墓地の横にそびえ立つマンションを指差して「このマンションの所から交差点にかけての一帯が普大寺が建っていた場所だよ」とご住職。墓の前に座りしばらく手を合わせて往時を偲びます。時間が無かったので雑草などを抜いてきれいに掃除出来なかったのが心残りでした。

寺跡のマンション.jpg

寺を後にしてマンションの正面、菅原町の交差点でカメラをパチパチ撮りながら、思えば高校時代、この付近は何度も通学帰りに通った場所であることを思い出しました。あの当時まさか将来尺八を吹くようになるなんて想像だにしなかった同じ場所を、全く違うシチュエーションで眺めている自分を空から俯瞰している変な想像が頭の中でぐるぐる回っていました。

交差点から普大寺方面.jpg菅原町交差点から普大寺跡のマンションを臨む
オルガン坂全景.jpgオルガン坂方面

結婚式は場所を「浜松八幡宮」に移動して行うというのでバスで神社へ連れて行かれると、雅楽の音色が耳に入ってきました。境内を新郎新婦はじめ両親親戚が行列をして雅楽の先導のもと神殿に赴くというスタイルで結婚式は始まるのだそうです。式はともかく雅楽を奏でるおじさん3人組のほうが興味ありますねえー。式の最中はお祝いの舞楽も舞われました。今の結婚式はなかなか凝ってますね。
雅楽.jpg

晩夏の宴 [今日の工房]

晩夏の宴
8月最終の土曜日に工房で暑気払いを兼ねてカラオケ尺八を楽しみました。
お酒を飲みながら尺八を吹くなぞ何と不謹慎な、もっと真面目に尺八に取り組め!と怒られそうですが、まあお待ちください。カラオケというこの日本人が発明した音楽を楽しむ方法は、初期のプロ用からお店の享楽用、さらに個人で楽しむ物にまで進化して、今や歌から楽器からおよそ音楽に関して練習する際に無くてはならないアイテムになっています。
楽器店に行って楽譜の棚をのぞくとボーカルや各種楽器ごとに伴奏カラオケが付録として付いている楽譜が多数置いてあります。クラシックからポピュラー、映画音楽、ジャズ、テレビ主題歌なんていうのもあり、ピアノやギターの伴奏からフルオーケストラの伴奏まで至れり尽くせりの内容です。中には交響曲の構成楽器全てが一つずつ抜けている練習用カラオケもあり、自宅にいながらオーケストラの一員として演奏に参加している気分になる豪華なものです。
これほどカラオケが普及したのもデジタル音源でいとも簡単に様々な音が作れるありがたい時代になったからですね。私も邦楽の現代曲をパソコンで五線譜に打ち込みそれぞれ各パートに箏・尺八など音を割当て、デモテープを作ったりカラオケとして練習に使うという技術覚え、いろいろと利用してきました。
なぜカラオケは練習用として効果があるのでしょう?
晩夏/松戸.jpg

カラオケはほとんど人工的に作られた電子音で、音程は442Hzで統一されているというし、機械ゆえもちろんリズムは一定ですね。メトロノームの無機質な音に合わせるよりは伴奏としてメロディーを楽しみながら表現を磨くことが出来る優れものといえます。

景山.jpg

実は自分自身リズム感が無くて尺八を習いたての頃は規則正しく刻むことはおろか8分音符、16分音符と音が混みいってくると走る走る!箏や三絃の音が裏拍で入るとすぐ連られてリズムが狂ってしまい先輩や先生からはよく怒られていました。
音程計測のチューナーが手に入ったからすぐに音程が良くなる訳でもなくて、尺八の音が箏より高いのか低いのか演奏最中には全く把握出来ていなかった自分ではありました。
どうしたらよかんべ??と悩んでいると当時鈴慕会で一緒だった林雅寛君や親友の古屋君がカラオケをやりなさいと私を居酒屋やスナックへ導くのです。飲んべえですからそのような場所は大好きですが歌はヘタクソで、ただただ吠えている有様でした。そこから歌の指導が始まったのです。

井上.jpg

声の強弱、声の伸ばし方、リズムの取り方、息継ぎ、歌い出しの部分やさびの所の表現、などなど。慣れてくると3〜4分の短い曲ですからカラオケの伴奏全体が見えてきて、リズムを数えなくても流れに乗ってくることが体感してきます。伴奏の音に歌の音程を合わせる練習として、わざと歌っている最中に伴奏の音程を変えて歌ったりしてみました。カラオケのあるお店は当然他の人もいて言わば観客として考えれば人前で演奏することの練習にもなったような気がします。他人の歌い方にも得る物はありましたね。
斉藤、松戸.jpg

また、知らない曲でも章節の頭が把握でき、歌いだしの場所や間奏の長さまで分かるようになってきました。それに伴って尺八の吹き方や音程、リズムが少しずつ良くなっていきました。現代曲の練習や表現方法はこの若いときのカラオケ修行?がかなり役に立ったかなとは思いました。歌も尺八も息を吸って音にして出し表現するのですから同じ練習になるのですね。そして何よりの収穫は良い歌、楽曲をたくさん知ったことです。良い歌は難しいとか複雑な作りになっているのではなくシンプルなのです、覚えやすいのです、心を打つのです。歌心を鍛えられました.....なーんちゃって
かなり金は使いましたが同じ酒でもただ飲んでいるよりは有効な時間を使ったかな?と納得する次第。

晩夏/遠藤.jpg

そんな体験を皆さんにもと余計なおせっかいで企画したこの晩夏の宴、準備は万全に整えました。先ず1ヶ月ほど前に課題曲として数曲を選び楽譜と音源を渡しておきました。
シクラメン楽譜.jpg
※この「シクラメンの香り」は「レ」から始めるほうが尺八の運指には慣れがあるので1尺6寸で演奏をと思いましたが、ツの半音(ツのメリ)やチ半音とハ半音が重なり、7孔で演奏するならば良いのですが5孔の時はツの中メリを使用するこの音階のほうが表現としてはベストかなあ......

歌謡曲から「北国の春」「シクラメンのかおり」「見上げてご覧夜の星を」「涙そうそう」「川のながれのように」ビートルズナンバーから「イエスタディー」ジャズボーカルより「テネシーワルツ「虹の彼方へ」「星に願いを」「スターダスト」など有名な曲ばかりです。歌謡曲はロツレチの譜面に翻訳して渡し、ジャズ編は五線譜を渡して自分で縦譜にするか、五線の下にロツレチを書くか、読む練習として何も書かないか等お任せにしました。

課題としては歌謡曲など知っている曲はおおよその感覚でリズムを取っているのでここは先ず第一に「楽譜に忠実に吹く」ことを狙いました。1拍・8分音符・16分音符、3連符や付点8分音符、タイやスラー、スタッカートなどを正確に刻むことですね。意外とこれが難しい!
次に今度は逆にリズムを変えてみたり長さを変えてみて歌の表現を楽しむことを課してみました。ジャズなど8分音符を付点8分音符のように弾んでスイングするように吹いたり、さびの部分を誇張して長めに吹いたりと技を使います。
また、北国の春などは譜面を見ずに吹いたり、「チ」から始まる音をカラオケを離れて、出だしの音をロ・ツ・レなどから始めてみたらどうなるかという音を探る練習にまで発展させると耳の訓練には効果的であるとか........


※「イエスタディー」のカラオケです。さて始まりは?繰り返しは?分かるかな?(乙のレから始まります)

もう講習会的な展開を期待したのですがお酒がおいしかったので、だんだん酔ってくるにつれ皆さん練習を忘れて楽しんでおられました。近所の皆様お騒がせいたしました。

over-the-rainbow.jpg

邦楽インタラクティブコンサート [尺八雑談]

チラシ.jpg

8/23(日)横浜は磯子区の杉田劇場で邦楽インタラクティブコンサートが開かれました。
何やら聞き慣れない言葉「インタラクティブ」とは辞書をひも解くと <双方向に情報をやり取りすること。デジタルメディアの持つ基本的な機能。送り手からの一方的な情報送信ではなく、その内容に対し受け手が適宜、応答することで、受け手側のニーズを多方面に生かすことができる。> と解説されています。
コンサートに当てはめれば、一方的な聞かせるだけの演奏ではなく、お客様に解説したり、客様の声を聞いたりして双方向に舞台を楽しむ演奏会をしようというわけのようです。副題に〜舞台と客席との交流〜と謳われていますが明快な言葉ですね。
今回このコンサートに助演で出演することになり、磯子区まで出かけました。三曲あさおでご一緒しております藤井誠山さんに誘われて初めてこの会に出ることになったのですが、さてどんな感じのコンサートかな.....。
会場ビル.jpg

JR根岸線新杉田駅前に建つ、しゃれたビル/ラ・ビスタ新杉田の5階に杉田劇場があります。250席くらいの客席で新しくてきれいですね。
客席.jpg
舞台ではゲネプロが進行中で尺八の出演者が舞台進行と搬出搬入を担当しておりました。出演者は神奈川県内の尺八、箏の先生方でこのインタラクティブの趣旨に賛同し、皆さん手弁当で参加運営しており、もう11回も会を重ねています。

吉田さん.jpg

コンサートの主催者で皆さんのまとめ役である吉田酔山さんにご挨拶し、楽屋へ案内されました。吉田さんは邦楽の演奏会をなるべく多くの人に聞いてもらいたいという願いのもと、このコンサートを発案されました。出演者共同で舞台を運営し、なるべく聞きやすい現代曲などを選択、司会者を交えてお客様に曲や楽器の説明をし、時には客席へインタビューもします。「私のわがままでこのコンサート始めたのですが、出演者の方々が快く引き受けていただき、ここまでやってこれました。感謝感謝です」と謙遜しつつ、にこやかな笑顔で皆さんを包み込みます。

石田さん.jpg
楽屋を出てロビーに行くと尺八の出演者の石田昭男さんがおりました。和楽器のリサイクル店「アンティークね色」のご主人です。私が尺八製作を始めた頃からのお付き合いで、ここしばらくはご無沙汰しておりました、お久しぶりです!古管尺八や尺八製作などについて商売のお話をちょっと........。

つくしの旅.jpg

昼食後午後1時半開演、私は1番目の「つくしの旅」(野村正峰作曲)に出演です。お箏4人と藤井さんと私の6人でコンサートの幕は開きました。なかなか響きのよいホールで、演奏していて気持ちがいいですね。今回初めての出演なのにリハーサルの時間がなかなか合わなくて1回しか合奏練習が出来なかったので糸の人にはご迷惑かけました、なんとか無事に演奏終わりました。

司会.jpg

舞台転換は緞帳を降ろさず暗転で行います。その間に司会者の女性が曲目解説を読み上げ、吉田さんがいろいろと邦楽についてお話をする進行でプログラムは進みます。本日演奏される曲は全部で16曲あり、終演予定は午後6時頃となりますのでちょっと長いコンサートです。そのせいかお客様の出入りが頻繁にあり全体を通してお客様が少ない印象を受けるのは残念です。

石田さんの本曲「阿字観」は3尺近い長管でじっくり聞かせています。地唄「磯千鳥」「雪月花によせて」吉崎克彦作曲「春の夜」宮城道雄作曲「管公」筑紫歌都子作曲と曲目は古典現代曲を交えてバラエティーに富んでいます。「管公」は舞の人に合わせての演奏でした。

黒髪.jpg

休憩後石田さんの「黒髪」舞台映えも良くきれいな演奏でした。その次が私と藤井さんで尺八本曲「下がり葉の曲」を演奏しました。ちょっと力み過ぎでした。「枯山水」山本邦山作曲は吉田さんの尺八と三絃の二重奏です。達者にこなしております。


吉田さんはプログラムに尺八のことを「EBP」と表記しています。
エンド・ブロウ・パイプ(end blow pipe)の略なのですが、尺八という日本独自の楽器を外国の方に説明する時にはよくバンブーフルート(竹のフルート)という言い方をします。しかしフルートいうにはあまりにも外形が違いますので他に何かちょうど良い翻訳語がないか、検討している時に「パイプの端から息を入れて吹く楽器」という言い方をそのまま当てはめてEBPという呼称に行き着いたとか。まだ吉田さんしか使用しておりませんが尺八に取って代わる現代的なネーミングとして採用されるかどうか、うーむ........。

さらにプログラムは進みますが、私は夜用事があり、途中で帰ることになりました。夜の打ち上げに参加したかったのですが残念!後ろ髪を引かれる思いで会場を後にしました。会を重ねているので出演者同士和気あいあいと楽屋、舞台袖で話が弾んでいます。残暑の厳しい日でしたが心地よい汗をかきました。
黒髪バック.jpg

裏穴(ヒ/ヒの五)の調整 [今日の工房]

裏穴の音程が乙甲で違う、甲になると音が出づらい、割れてしまう、という症状を改善する調整をお話ししましょう。短いサイズの尺八(1尺6寸〜1尺3寸)によく見られる症状で吹き方が原因ではなく、内径と指穴位置の間違いがこういう症状を引き起こします。
では尺八の音程はどのような構造として説明できるのでしょうか?

尺八の全長の長短で音程が上下するように、指穴の位置が歌口から近い遠いでその指穴の音が上下します。同じ位置であれば指穴の直径が大きければ音程は上がり、小さければ下がります。内径では管全体の内径が大きければ全体が低くなり、逆に小さければ音程は高くなるのです。
つまり音程調整は指穴の位置と大きさを決め、それに合わせて内径の大きさを決めて調整するわけでどちらかでも間違っていると不安定になったり、甲乙でバランスが取れない症状を引き起こします。
内径の構造を表したグラフで各音の調整ポイントが歌口より指穴までの長さの1/2・1/4のところにあるとお話ししましたが、甲乙のバランスはまさにこの両方の径の大きさの比で決まるのです。
5孔穴音程図.cwk-(DR).jpg図1


図1のグラフは1尺8寸の裏穴の音程や鳴りに不具合がある時の内径構造と指穴の位置を表しています。
症状としては他の音に対し裏穴の乙の音の音程は高め出るのに対し、甲の音の音程が低めになる(または音程は合ってはいるものの不安定)。
甲の音が薄い、強く吹けない、割れるなど演奏に支障をきたす場合が多いことです。

これは歌口に近い1/4の部分の内径(甲の領域)が大きく、先ずこれで甲の音程が低めになるのですが指穴位置が正常な場合と比べると高いので不安定ながらバランスは保っています。しかし1/2の部分の内径(乙の領域)は正常なので乙の音程は高くでてしまいます。この時、指穴だけを下げると甲の音程だけが低いアンバランスになり、1/4部分の内径のみを狭くすると甲乙ともに音程が高くなってしまいます。
従って調整は甲乙両方の音程が同じような高めの音程になるよう1/4の部分の内径を狭くし、その後指穴を他の音と同じ音程になるよう位置を移動するという手順になります。

注意点として指穴の大きさがあります。尺八本体が太くて肉厚の場合、指穴を大きめ(11mm以上)にしないと音程が届かない時があります。かといって下げる位置を中途半端ににすると音程の不安定感が残ります。短いサイズの尺八では4孔と5孔の位置も接近するため、この周辺の径を調整する必要も出てくる場合があります。
ちなみに私の工房での裏穴の位置は太さにより上下しますが1尺8寸管で歌口より228〜231mm、1尺6寸管で201〜204mmで設定しています。

◯指穴移動作業(竹の粉を充填し、アロンアルファで固め、研ぎ出して穴をあけ直す)
穴移動⑦.jpg穴移動⑥.jpg穴移動⑧.jpg穴移動③.jpg穴移動②.jpg穴移動①.jpg

鳴り方の障害はこの内径の調整と位置移動でかなり改善されますが、「地無し管」や「広作り」の尺八では内径全体が広い場合が多く大甲音などはかなり出にくいので裏穴の鳴りも影響を受けます。このような尺八や修理をしないで甲の裏ヒの音程を上げる裏技として1、2孔の運指を一工夫する方法があります。
運指ヒの五①.jpg

都山流では「ハ」は1、2孔を閉じます。「ヒ」も同様に閉じたままです。
琴古流では「ヒ」(都山のハ)も「ヒの五」(都山のヒ)も甲では1孔閉じ、2孔は開けて吹きます。
この琴古流の手法で裏穴「ヒ」を出してみましょう。かなり出易くなります。
運指ヒの五②.jpg運指ヒの五③.jpg

さらに1孔開けて、2孔を閉じて吹いてみましょう。「ハ」(琴古流のヒ)は半音上げって「半音のヒ」(琴古流のヒの五の中メリ)となりますが、裏「ヒ」(琴古流のヒの五)は少し音程が上がるだけで音も出易くなります。
裏穴の音に支障が無くても、「弱音で裏ヒを伸ばしたい時」や「短い尺八を使用する時」などこの1、2孔閉開を併用すると表現にぐっと幅が出ますよ!


尺八アンサンブル十哲 第17回定期演奏会 [尺八雑談]

8月9日(日)尺八アンサンブル十哲の演奏会がありました。
十哲チラシ.jpg
十哲は他の楽器を加えない尺八だけのアンサンブルで全曲を演奏するグループで、もう17回の定期演奏会を重ねています。既存の尺八重奏曲はもちろん、ポピュラー、クラシック、映画音楽などを尺八重奏にアレンジしてレパートリーに加えています。
銅像.jpg
葛飾区にある、かつしかシンフォニーヒルズ・アイリスホールに午後2時頃着きました。入り口にはモーツァルトの銅像がお出迎えです。この十哲は、そもそも千葉大学の邦楽サークルOBOGによって結成され、サークルを指導されている尺八演奏家曽我哲山さんの名前にちなみ「孔子の優れた10人の門下生」という意味の十哲に基づき名付けられたそうです。受付にはその先生曽我さんがにこやかな笑顔で立っておられました。豪快な飲みっぷりと快活な人柄は良き兄貴として今でも皆から慕われています。実は曽我さんと私はNHK邦楽技能者育成会<http://www.nhk.or.jp/event/ikuseikai/ikuseikaitoha.html>25期の同級生で30年前の1年間一緒に渋谷のNHKスタジオに通った尺八仲間です。「やあ、お互い年取りましたなあ....」
曽我さん.jpg
楽屋.jpg

楽屋を覗くと10数名の男女が出番前の最後の調整に余念がありませんが....あまり緊張感はありませんでこれから宴会でも始めるような雰囲気でした!この中の何人かは工房のお客様として修理調整、製品購入をいただいており、言わば私の作品実演を調査に来たようなもので「コラー!いい音出さなかったら承知せんどー」と笑いながらプレッシャーをかけるのであった....。

合奏風景.jpg

2時半演奏開始です。ホールに美しいハーモニーが流れ出ます。立山アルペン紀行(石垣征山作曲)火灯窓(大塚茜作曲)本末(ジョン・海山ネプチューン作曲)知っている曲もあり知らない曲もあり、最初は捉え所のない不安定な曲にも感じたのが、3人〜5人で奏でる音の重なりに体が馴染んでくると一人一人の音の違いが分かってきて面白くなってきます。実力のある人が皆をリードしていったり、一生懸命に練習してきたんだなと分かるようなたどたどしい演奏もありましたが、こぼさず崩れず演奏し終わります、拍手!
ホール内部.jpg
皆さんプロではないサラリーマンで、仕事の合間に練習時間を作ってこの舞台に臨んだのですから当然上手ではありません。しかしながら同じ釜の飯を食ったというようなチームワークの良さとこの尺八だけのアンサンブルという演奏スタイルが勢いを持っているのでしょう。舞台が生き生きしています。
A管.jpg
アランフェス協奏曲(ホアキン・ロドリゴ作曲)ポップスメドレー(ケ・セラ・セラ/二人でお茶を/ムーン・リバー)おっと!ここで私の製作したA管が登場しました。吹いている吉田さんの音に耳が行ってしまい、曲を聞く雰囲気ではありません。わだつみのいろこの宮(福田蘭童作曲)この十哲の世話役的な存在の中村さんの技が冴え渡ります。

さてプログラムは進んで最後の曲になりました。委嘱初演となる「四大美人」という曲、作曲者は山木幸三郎です。言わずと知れた宮間利之&ニューハードのギタリストにして作編曲者として多くの作品を書いてきて、日本のビッグバンドを国際水準にまで引き上げた功労者です。<http://sound.jp/jazzconcert/profile.htm
ご本人が会場に見えていて、インタビューとなりました。
山木先生.jpg

聞き手は西村さん、ちょっとコミカルなその人柄は十哲の癒し系?様々なお客様を工房に紹介いただくので我が工房の招き猫的存在です。父上が日本尺八連盟栃木支部長の西村的山さんで栃木ではジャズ尺八プレイヤーとしても有名です。さて壇上に登った山木さん、好々爺然として笑顔もやさしくとても日本を代表するアーティストとは見えません。広く音楽を楽しんでもらうというモットーのもと、アマチュアにもいろいろと作曲や演奏指導をしているという言葉の一つ一つに暖かさが感じられました。


しかし「四大美人」とは凄い曲名です。本日の参加メンバ−13名のうち女性は3名、さて?舞台に男性がぞろぞろ9名並びまして、次に華やかな衣装をまとった四大美人(クレオパトラ、マリー・アントワネット、楊貴妃、小野小町)が登場して笑いを誘います。
四大美人①.jpg四大美人②.jpg

ジャズバンドのような音の厚みはありませんが13名の息の合った演奏は見事です。各美人の独奏も聞かせどころで、美人になりきって演奏しておりました。一人ちょっと不審な小町がおりましたが.........。

久しぶりに良いコンサートを聞きました。尺八を充分に楽しんでいる皆さんが輝いていました。お疲れさまでした。

全員.jpg

第24回麻生音楽祭 [三曲あさお]

音楽祭全景.jpg

6月、7月は麻生区の音楽の祭典「第24回麻生音楽祭」が2ヶ月間に亘って開催されます。6月27日はアンサンブルの部の発表会でした。演奏会場の麻生市民館大ホールでは17の団体による各種様々な演奏が披露されました。
三曲あさおは第6回からの参加ですから、参加団体の中では麻生弦楽合奏団、オカリナを楽しむ会に次ぐ古株となってしまいました。その頃はたしか6団体くらいしか参加しなかったように記憶しております。そういえば三曲あさおのメンバーも初期からの会員は塚本、岡崎、高野、古藤、仲山、山崎、松戸、と私だけですね。ずいぶんと会員の数も増えました。
演奏するジャンルも初期はクラシックやギター、オカリナ、邦楽などアコースティックな楽器のみで中には手作り楽器のアンサンブルというのもありました。それが今やジャズ、ロック、カントリー、ハワイアン、ブラスバンド、大正琴まで加わってにぎやかになった反面、1団体の出演時間が15分と短くなってしまい演奏には不満が残る音楽祭ですね。

また、ただ参加団体が次から次へと出演して演奏するのではまとまりのない羅列のコンサートになってしまい、もったいないとの声から昨年度より参加団体の有志による合同演奏を始めました。今回も麻生区のイメージソング「かがやいて麻生」をピアノ、ギター、弦楽合奏、ブラスバンドの皆さんと一緒に尺八を吹いてきました。

ケンタウロス合奏.jpg
三曲あさおの演奏曲は「ケンタウロスの矢」です。5月に定期演奏会が終わったばかりで音楽祭まで1ヶ月と時間が無いため、新年の勉強会で演奏した曲を出しました。いささか疲れが残っているのか練習はあまり芳しくなかったように思いますが、そこは年の功....じゃなかった演奏経験豊富な皆さんです、本番は見事に乗ってくれました。

輝いて麻生.jpg
三曲あさおの演奏に引き続き「かがやいて麻生」の合同演奏です。
大津留、齋藤、船明の尺八3人で参加しました。いきなり合奏というわけにはいきませんで、午前中にリハーサルが隣の大会議室で行われました。
弦楽合奏のメンバーが先に来て音合わせをしている所へ、我々3人の白髪頭が入ってきて、やおら尺八を取り出します。弦楽の方々少し怪訝そうな顔で我々を見つめます。「かがやいて麻生の演奏に参加されるんですか?」と聞かれて「はい、勉強させてもらいます」と我々、皆さんちょっと不安そうな顔、そりゃ邦楽は普段こんな曲は演奏しませんよね。違和感というより別世界(音楽以外)の人間扱いかも....。
ギター、ブラスも加わっていざ合奏を始める段になって、「尺八の方、楽譜はお持ちですよね?前奏8小節やってから歌になります、間奏3小節で3コーラス全部やりますけどお分かりですよね?」と念を押されてしまいました。

麻生区イメージソング.jpg

邦楽は難しい古典を練習し演奏しているとの認識はあるのでしょうが、使っている楽譜が邦楽独自のものだし、いわゆるハーモニーやリズムといった共通の要素が少ないため、音楽を演奏しているという認識は無いように思われます。
これは一般の人にとっても同じような感じ方で受け止められています。
邦楽の演奏会へ誘うと「分からないし知らないし楽しそうじゃない」との返事が多く返ってきます。邦楽でも古典はさておき現代曲には結構面白く,リズム感たっぷりの曲もあるのですが、知らない曲には二の足を踏むようで,その代わり一つでも知っている曲(アレンジされたクラシック、ポピュラー、映画音楽、歌謡曲などの曲)があるとその演奏会は1〜2割はお客様が増えます。
コンサートのあり方は様々なれどお客様を楽しませるという1面では邦楽はまだまだコンサートの種類が少ないと言えるかなあ。
◯リハーサルの演奏一部です。

さて、リハーサルを無事こなして本番もそつなく演奏出来ました!他の楽器の音量に埋没して聞こえたかどうかは定かではありませんが....。

奏さんとの合奏.jpg
10分の休憩後また箏のグループによる演奏がありました。「グループ奏(かなで)」による日本古謡の演奏です。
箏演奏家の谷口恵美子さんが文化庁・「伝統文化をこどもに」委託事業に参加して子供達を集め月2回童謡を中心に箏を教えているグループで小中学生あわせて20名程います。かわいい子供達が浴衣姿で「ないしょ話」「てるてる坊主」「荒城の月」などを演奏しました。
恥ずかしながらこういう事業があることを知らなかったのですが邦楽の底辺拡大に人知れず努力されている谷口さんに敬意、しかし子供達は受験で中断してその後なかなか復帰してくれないのが悩みだそうな。
で、谷口さんの依頼により荒城の月を尺八賛助演奏しました。元気な演奏に我々も若返ってくるようで何とも清々しい気分ではありました!うん

午前中のリハーサルより始まって3曲を演奏し出番が終わったのが午後3時半、外は太陽がじりじり照る真夏日。いやーよく汗かいた。ということで夜は盛大に打ち上げ、ビールで喉を潤し,2次会まで足を伸ばして結局疲れが取れなかった.......。
宴会.jpg



高尾山尺八本曲鑑賞会/奉納演奏 [高尾山・尺八本曲鑑賞会]

6月6日(土)高尾山薬王院客殿にて琴古流尺八本曲鑑賞会が開催されました。
2000年にスタートしたこの鑑賞会はめでたく10回目の節目を迎えることが出来ました。高尾山の中腹に位置するとはいえ、簡単なハイキングコースでもある参道を通って会場まで足を運んでいただいた多くのお客様に感謝申し上げます。
記念撮影.jpg

今回はその10回目の記念として薬王院本殿での尺八奉納演奏を企画してみました。奉納曲を「三谷菅垣」として、ご来場いただくお客様にも一緒に奉納をと呼びかけましたところ16名ものご応募をいただき準備にも一段と力が入りました。

リハーサル①.jpgリハーサル②.jpg

当日は12時半に先ず演奏会場の客殿にお集まりいただきリハーサルから始まりました。琴古流本曲ですので琴古流の方々が主に参加されましたが、都山流の楽譜も用意しましたので都山流の方も見え、さらに民謡尺八のほうでも是非奉納をということで参加をいただきました。また、2部合奏ということもあり、いきなり合奏は出来ませんので、事前に私の工房や三曲あさおの練習会で下合わせを重ねて準備をされてきた方もいらっしゃいました。会主橋本さんの丁寧な説明もありリハーサルに熱が入ります。
記念楽譜①.jpg

1時10分、いよいよ奉納会場の薬王院本殿に向かいます。朝からの曇り空に時折時雨れが冷たく降っておりましたが、ようやく空が明るくなってきました。本殿はすぐ隣にあるので移動は5分程で、奉納会場内に入ります。本殿前で参拝していた多くのハイキング客が私達2人の紋付袴姿や尺八を携えたおじさんの群れを怪訝そうな顔でジロジロ見ていました。本殿での尺八奉納は初めてだと薬王院の事務の方が言っていましたから、地方版ニュース記事くらいの価値はありそうです。誰も取材してませんが....。本殿の奥に不動尊が祀られその前に大きく四角に囲まれた護摩台が鎮座しています。毎日定時にここで護摩が焚かれ厄落とし、家内安全、子孫繁栄の祈りが捧げられているとのこと、奉納演奏の少し前に本日の1回目の護摩修行が終わったばかりでした。本殿内は少し暗かったのは予想外で楽譜が見づらい!これは合奏中に楽譜を見落とすかも.....。

本番①.jpg本番②.jpg本番③.jpg本番④.jpg

橋本さんの合図でいっせいに奉納曲「三谷菅垣」を吹き始めます。大勢で吹き出す尺八の音は結構広い本堂にこだまし、外の参道にまで達していたのではないでしょうか、本殿外の参拝客がしきりと中を覗き込みます。曲は後半に入ったあたりから少しスピードが増し、本手と替手がずれかかります。大きく体を振って皆さんをリードしていきます。最後の音を出し切り10分ほどで奉納は終了しました。外へ出ると雲が切れて太陽が顔を出し、一気に初夏の様相を呈してきました。皆さんの顔も奉納を成就し終わった安堵感と達成感(ちょっとオーバーかな?)で上気しておりました。よかったよかった!
奉納曲「三谷菅垣」の楽譜は高尾山奉納記念として装丁したものを配布。
その奉納の模様を撮影したDVDとスナップ写真データCDを奉納者全員にお渡しいたしました。
この企画は非常に好評につき来年度から高尾山に限らずいろいろな寺院で奉納する企画を立て、その奉納曲を講習会として練習するシリーズに発展させていく計画です。

奉納演奏の模様を動画でご覧下さい。

コンサート①.jpg
さて、本曲鑑賞会です。これからが我々の本番、気を引き締めて尺八を手に取り,先ずは橋本さんの独奏「厂音柱(ことじ)の曲」からスタートです。今回の演奏会では吹き合わせの原点を考えてみました。「吹き合わせ」とは本手に替手の編曲を施した重奏や、違う長さの尺八で同じ曲を吹く(原曲を移調して吹く)といった合奏のありかたを指し、江戸時代より現在まで多種多様の吹き合わせの曲が編み出されています。
プログラム2番「吾妻の曲」は8寸と2尺、プログラム3番、4番「目黒獅子」「三谷菅垣」は8寸同士で演奏した後、最後の曲「打替虚霊」で今回の新企画です。
違う長さの尺八で同じ曲を吹く曲を新たに我々で編曲し、どのようなサイズ同士の演奏が一番効果的かということを練習の過程で考証してみることにしました。1尺8寸、2尺、2尺3寸(A管)1尺3寸、1尺6寸等々組み合わせはたくさんあり、結局2尺3寸と1尺6寸の組み合わせで吹き合わせをし、曲中交互に掛け合いをしたり、独奏を入れたりと変化を持たせる工夫をしてみました。


また、本曲演奏はリズムが単調で、変化に乏しいため何曲も続けて聞くのは少し飽きてくる傾向にあります。今後本曲演奏を進化させていく狙いから、さらに尺八を入れて三重奏、四重奏としたり、自然の音(鳥の声,水の流れ)鐘の音など効果音を入れたりしてみるのもどうかなと思っています。
プログラムの最後にアンコールとして「一二三鉢返しの調べ」を1尺3寸と1尺8寸の吹き合わせで演奏し、効果音として鐘の音を入れてみました。まだ試験段階ですが来年の演奏会からいろいろと実験を重ねて行くつもりです。






この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。