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明治大学三曲研究部創部50周年記念演奏会奮闘記パート3 [明治大学三曲研究部]

さて、50周年の記念事業は演奏会だけではありません。創部以来600名近くを数えるOBOGの方々の住所を整理して配布する名簿作成委員会、50年の軌跡を後世に残す記念誌作製委員会、お世話になった方々への感謝と顕彰、OBOG諸氏に参集いただいての記念祝賀パーティー委員会など記念事業は膨大でありそれぞれに委員会を設けOBと現役が力を合わせて事務をこなしてきました。そしてこれらを運営し印刷や宴会準備に演奏会も含めてお金がかかります。記念事業実行委員会ではこの資金調達のため広くOBOG諸氏に賛助金の募集をお願いし、目標を上回る額の賛助金をいただくことができました。御協力本当にありがとうございました。

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50周年記念祝賀パーティーは演奏会の終わった後、午後5時半より明治大学お茶の水校舎横に隣接している交流会館「紫紺館」で開催されました。演奏が終わり演奏会部門の私は達成感の放心状態と疲れで体が動かず、タクシーで会場へ向かったのでした。ちょっと遅れて到着したためご来賓の挨拶に間に合いませんでした。特に二代目尺八講師としてクラブの尺八指導をしていただいた青木鈴慕先生のお話しを聞けなかったのは残念でした。

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受付で会費を払い記念誌を受け取ります。OB会長の小菅さん揮毫の「絆」の金文字が鮮やかに目に入ります。
内扉には懐かしいお茶の水校舎の記念館の写真に大学校歌が印刷されております。各代の幹事長の談話と昔のアルバムは長い三曲の歴史を如実に物語っておりました。


記念品の贈呈や祝辞など一通り行事が済んで、さあ乾杯です。昔話とお互いの近況、先生先輩への挨拶で話し声が渦を巻き、落ち着いて酒を飲んでいる暇がありません。料理も食べたのかどうか未だに記憶がない!カメラのフラッシュに気が付いて自分も撮り始めますが酔いも回って来て面倒です。この時写した写真は皆ピンぼけでした……。

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さて、青木先生へご挨拶にと思って見渡すと初期のOB達に囲まれうれしそうに談笑しています。

大学を終えた後就職せず尺八の専門家になるべく青木先生の門下に入ったのは昭和54年の春でした。
厳しい稽古としつけは今もって自身の邦楽界で生きる際の糧となっております。
ところが諸事情により15年程前鈴慕会を退会してしまったのです。
自身の進むべき道を模索し尺八製作も生きる道として決め始めた時期で大いなる決断でした。
その後一度もお会いしておらずこの日が15年ぶり再会となりました。
しかしなかなか言葉は出てきませんね。「ご無沙汰しております、船明です」「おー君か変わらないね」と言葉を交わしたかどうかのうちに、割って入って来た別の先輩に話を持っていかれてしまいました。そしてそのままお話し出来ず先生は途中で帰られました。うーんちょっと残念。
しかし、その昔厳しい稽古と歯に衣着せぬ批判で邦楽界のご意見番として恐れられた?頃から見ると柔和な顔で昔話に聞き入る先生の後ろ姿はちょっと寂しい!

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宴は大学校歌を皆で肩を組み大合唱するフィナーレを迎え、岩橋さんの「フレーフレー明治、フレーフレー三曲」のエールで幕を閉じました。そして解散という訳にはいきませんでそれぞれの代でグループが出来、2次会の場所を探してお茶の水駅近辺へ散って行きました。
我々も近い代の先輩後輩に声をかけ、近所の焼き鳥屋へ直行!
その際に恐れ多くも金津先生に声をかけた所快諾をいただき、皆で抱えるようにして店へなだれ込んだのでした。
毎度のことながら3次会までは記憶にありますが……。いやー長い1日でした。


その後7月3日に記念事業実行委員会の解散式がOB会長小菅さんのご自宅、新宿は法身寺で開催されました。

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この実行委員会のみの特別会計を清算し、各委員会より事業の結果と反省などが報告され、実行委員長の宇田川さんが総括して全てがここに終了となりました。
委員会のみの盛大な打上げが豪華料理を並べて開かれ、この時は話よりもしっかり料理を口に入れた私でありました。

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明治大学三曲研究部創部50周年記念演奏会奮闘記パート2 [明治大学三曲研究部]

平成22年6月12日(土)初夏の良く晴れ渡った土曜の午後、ここ赤坂のサントリーホールでは明治大学三曲研究部の半世紀に亘る集大成とも言える演奏会が今まさに幕を開けようとしていました。クラブを創設した宇田川さん、OB会長の小菅さんを始め初期のOBOGの方々の思いはいかばかりだったでしょうか。

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■客席はほぼ満席でした

最初は三曲研究部現役の皆さんによる「アクシス」から演奏が始まります。総勢29名という大人数で見事なハーモニーを聞かせてくれました。しかも全員暗譜!箏・三味線の暗譜はよくありますが、尺八のそれも現代曲での暗譜演奏はあまり見たことがありません。若いっていいな!

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■息の合った演奏を少しお聞き下さい

次は「千鳥の曲」です。広く参加を呼びかけて演奏から遠ざかっている人にも出演できるよう当日飛び入りも可として募集しましたがあまり集まりませんでした。やはり現役の社会人には時間の余裕が無いのかもしれません。昔は公官庁や企業にも邦楽のサークルがあり、楽しむ余裕もあったと聞きます。しかし今や野球やバレー、ホッケーなど伝統有る企業のクラブさへ閉鎖に追い込まれているご時世です。定年後しか自分の時間をたっぷり使えないのは豊かな社会と言えるのだろうか!などという憂いを吹き飛ばす元気な千鳥の演奏でした。

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50年という長い歴史の中で大きな社会現象として年号が新しくなったことがあります。天皇陛下の崩御により昭和から平成へ年号が変わり、その平成生まれの子達がちょうど大学生となっている現在、時代はどんどん進んでいきます。パソコンと携帯の時代になるなんて夢にも思いませんでした。

次は平成生まれではありませんがつい最近卒業したばかりの、まだ現役の演奏能力を維持している若手の演奏です。
出番前での緊張感などという感じは微塵もなくお祭り気分でわいわいと円陣を組み演奏を楽しんでいる雰囲気は、我々古いOBにも伝播しなんだかうきうきします。
現代邦楽「白い航跡」の美しい旋律、地唄「夕顔」のしっとりした三曲合奏、ともに息の合ったフレッシュな演奏でした。ずっと楽器を続けてくれるといいなと願わずにはいられません。
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次は中堅どころ?と若手の混合演奏「楫枕」です。私も尺八で参加しました。糸の皆さんは卒業後も先生に師事して演奏を続けており現役とはまたひと味違う重さが?ありました。
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次も混合の合奏で「飛騨によせる三つのバラード」です。創成期のOG五味さんと平成13年卒業の佐久間さんとの年齢差39歳、この間に昭和40年、昭和50年、平成5年、平成9年、平成10年と各代の人達が均等に参加し、まさに50周年の記念演奏会にふさわしい編成になっていました。それだけに合奏練習も大変だったと思います。流れるように演奏を聞かせてくれました。
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ここで10分間の休憩に入り、客席でロビーでOBOGの方々の楽しそうな話し声がこだましておりました。
休憩後「彩花物語」から後半の演奏が始まります。この演奏をした昭和43年卒業の人達は仲が良く「赤坂邦楽の会」というグループを結成し、毎年発表会を開催して演奏を楽しんでいます。今回サントリーホールの予約が取れたのも赤坂の地元で活動していたこのグループの縁によるもので、演奏他記念事業の中核としてOB会を牽引していただきました。感謝感謝です。
同じ仲間で定年後までずーと演奏を楽しんで来られたその有様は範として見習いたいものです。若手の和気あいあいとは一線を画して楽屋でも舞台でも実に楽しそうでした。
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さて演奏会も佳境に入りOB会の中でも尺八をプロとして、アマチュアとして続けてきた3人による尺八三重奏「鼎」の演奏が始まりました。その輝くばかりの頭……じゃなかったハーモニーは見事でした。頑張りました。第1尺八の古屋君には身内のご不幸にもかかわらず時間を融通して参加いただきありがとうございました。彼とはこの曲を学生時代に一緒に定演で演奏して以来何度か舞台に掛けてきました。サントリーホールという最高の舞台で再度一緒に演奏出来たことはこの上ない記念となり感謝感謝です。
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さて現役、OBOGの演奏が全て終わり、いよいよ三曲研究部講師の演奏です。
箏・三絃講師の金津千重子先生は東京芸術大学卒業後すぐの昭和46年に就任されました。学生とほぼ変わらない年齢だったため、練習場所へ初めて顔を出した時は三曲部員と間違われて「君どこの学部?」と聞かれたとかエピソードを聞きました。以来40年もの長い期間を講師として学生達を指導していただきました。邦楽という地味なサークルながら最近は入部希望者が多く70名を越す大所帯になってきて、ここだけは邦楽の将来は大丈夫だと思ってしまう程活気があります。
これからも末永くご指導いただきたいとの思いで大曲「根曳の松」をカット無しで演奏していただきました。助演には弟子でもある南海佳子先生、湯井麻里子先生をお願いしました。息の合ったというより「息をのむ」演奏を堪能出来ました。
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尺八講師の佐野鈴霏先生は昭和45年卒業の明治三曲OBで現人間国宝の青木鈴慕先生に師事し三曲界の重鎮として活躍されております。
180cmを超える身長と甘いマスクで若い頃より学生に人気がありましたが還暦を過ぎた今でも現役生に聞くと格好良い先生としてその人気は不動のものだとか!
虚無僧音楽である古典本曲を1尺3寸、2尺3寸の2本を使い会場に響き渡る豪快な音色を聞かせてくれました。
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ここで次の合奏曲の舞台転換の時間を使ってOB会長小菅大徹さんの挨拶と三曲の歴史などが語られました。60年安保の年に生まれたクラブのエピソードは時代を感じさせてよい話でした。
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最後は合唱合奏曲「道灌」です。江戸城の開祖太田道灌を詠った叙事詩に箏三絃尺八打楽器を加えた宮城道雄作曲の大合奏曲で、総勢60名のフィナーレを飾るにふさわしい陣容で演奏は始まりました。
金津先生が箏独奏を受け持ち現役生が合唱を担当して舞台は楽器と人で一杯!
指揮も無しでまとまるのだろうかとの心配をよそに、見事なリズム感で終始緊張を保ち迫力のある演奏が出来ました。
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演奏終わって後片付け、OBOGの皆さんは三々五々記念式典とパーティーを開催するお茶の水の紫紺館へ向かうためホールを後にします。
だんだん人が減り、静かになっていく楽屋で一人「終わった」とつぶやきました。
良い演奏会ができました。皆さんへ感謝感謝…………。





明治大学三曲研究部創部50周年記念演奏会奮闘記パート1 [明治大学三曲研究部]

6月12日(土)1年もの準備期間を経て明治大学三曲研究部創部50周年記念演奏会が開催されました。
50周年という長い月日を先輩から後輩へ受け継がれて来たこの邦楽クラブの伝統が一つの区切りを迎えた事実を盛大に発表しようと会場をサントリーホールに決めたのが昨年の6月でした。
会場をあれこれ物色していて、明治大学の構内にも大きなホールはあるのだが,学校の行事が優先されホールの使用時期をこちらで選択出来ない弱みがあった。新宿区内の公営ホールは予約が半年前で抽選ということでこれも準備に余裕がありません。民間のホールで良い環境の所を考えていた矢先、先輩の「サントリーホール」が使えるかもしれないという一言で全てが動き始め、内容的にもかなりレベルの高いコンサートを企画出来ると確信した瞬間でもありました。
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夏も終わりの初秋9月クラブの箏・三絃講師金津千重子先生のご自宅を訪問し演奏曲目の相談をしました。「サントリーホールでの演奏など一生の内にあるかないかの大変貴重な経験だからなるべく多くのOBOG現役を出演させましょう!」と曲目選定よりも教え子達への声かけに熱心に取り組んでいただいたのは助かりました。このことがこんなにも多くの人が舞台に乗る演奏会になるとは夢にも思いませんでした。

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■金津先生と助演の南海佳子先生、湯井麻里子先生(奥の二人)

トリの全員合奏曲を「道灌」参加者募集曲を「千鳥の曲」と決め、卒業後も継続して楽器を演奏しているOBOGでそれぞれペアを組み6曲程集まりました。これに現役の曲、各講師の演奏を加えて計11曲が演奏曲と決まりました。

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■道灌三絃のレッスン

年が明けて2月より「道灌」のパート練習がスタートしました。金津先生のご自宅近くの集会所に集まり個別指導を受けたり、空き時間には各個人曲の練習が挟まれました。現役の皆さんにも合唱で参加いただき、最終的に「道灌」は60名もの大合奏になってしまいました。いやーこれは舞台に並べるだけでも大変だぞ!それでもサントリーホールの小ホール(ブルーローズ)は舞台幅が16mと長く奥行きも5mでしたので実際にはなんとか窮屈になること無く並びましたが……。

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3月,4月と合奏を重ね5月15日(土)に通しリハーサルを実施して楽器の出し入れ、並び、準備物などのチェックをし、サントリーホールの内部構造、楽屋割、タイムスケジュールなどを説明しました。

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こうしていよいよ6月12日の朝を迎えたわけです。ホールは出入りが厳重に管理されていて「入館証」を受付で渡され、首からぶら下げて会場内を動き回ります。
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■三絃の調弦や演奏の助言を澤村裕司先生にお願いしました

ホールは当日しか借りてないので午前中に舞台リハーサルをすませ、午後12半より演奏開始です。演奏時間はほとんど無く、舞台上での位置決めのみになります。客席内にて箏や譜面台を組み立て調弦して舞台に上げ、終わったら次の箏……目の回るような忙しさです。

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11時30分一通りリハーサルが終わって記念撮影をパチリ!
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見よスタッフも入れて総勢100人近くがこの演奏会に参加していただきました。もう後は演奏を始めるだけです。準備としてはここが終着点。ほっとしたのか急に体が重たくなって開演前の30分は眠いこと眠いこと……。
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客席には撮影スタッフ、受付にもスタッフが陣取り準備は整いました。お客様が順次入り始めた頃、楽屋ではお弁当を広げてしばしの昼食タイム。さて本番が始まります。
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第17回定期演奏会奮闘記 [三曲あさお]

ずいぶんと記事をさぼってしまいました。6月まで明治大学関係,三曲あさお関係、麻生音楽祭関係の演奏会開催に携わり、動き回って、チラシその他準備して、練習して、演奏して片付けてと落ち着く暇がなく動き回っておりました。
どうやら全て無事に終わり一段落.....。記事を徐々に書き出す準備に追われています??
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三曲あさおの第17回定期演奏会が5月8日(土)麻生区市民文化センター大ホールにて開催されました。三曲あさお結成より20年目の節目ということで1000人収容出来る大ホールを借りたのはよいのですが、さてお客様は何人程来場してくれるだろうか不安の開幕です。定期演奏会ということで毎年毎年演奏する曲目は変わりますが、演奏会の準備、進行は同じことの繰り返しで、いかにスムーズにプログラムを運び、お客様を楽しませるか、会員の一致団結が鍵ではあります。三曲あさおでは演奏会をすべて自分たちの手で企画運営します。
演奏以外、曲目決定、チラシ作成発送、会場手配、練習場所確保、リハーサル、裏方、宴会まで会員各々分担をして演奏会を仕上げていくのです。
では、演奏会の一日を振り返っていろいろと会員の皆さんの奮闘ぶりをご覧下さい。

今回は前日5月7日の夜をリハーサルのためホールを取ってあり、照明や立ち位置決めなどざっと済ませて本番当日を迎えました。
朝9時集合で早速大合奏「祭り幻想」の練習が始まります。朝早くでまだ緊張感もなく皆さんリラックスして談笑しております。
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現代の曲が終わり古典の曲の舞台設定「毛氈、金屏風」の設営です。
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今回、2曲目の茶音頭ではその曲名通り「茶道のお点前」を曲の演奏中に披露する企画なので舞台上の位置確認とお客になる会員との打合せが入念に行われました。
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古典の出演者は和服で、現代曲の出演者は洋服で両方出る方は両方の服装を、さらに複数の現代曲に出演となるとブラウスの色も変えて......お色直しも演奏会の楽しみですね!(もちろん男性陣も衣装には凝っているようです)
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午後1時開場です。

会場外の入口付近に大きな立て看板を設置。これはチラシを発送した際、封筒の宛名書きをしていただいた松戸さんの奥様に書いていただきました。立派な書に負けない演奏をしなくては!
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受付は出番の遅い方が最初に担当、後半の休憩後は最初の出演者が担当と交代で務めます。今回も最初の不安をよそにどんどん入っています。しかし1000席を埋めるのは大変なので通路を挟んで後ろ側300席は締め切りでスタッフ専用の場所として、お客様を前の方に誘導しました。
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午後2時開演です。
古典の「乱れ」から演奏が始まりました。本手は生田流、替手は山田流が担当、尺八は琴古流です。
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2曲目が今回の特別企画、地唄「茶音頭」の演奏に合わせてお点前の披露です。
ご披露いただいたのは「宗偏流」の大宮宗裕さん(介添え)、佐藤朋子さん(お点前)です。やや退屈な地唄の演奏もお点前とのコラボレーションで緊張感のある舞台となり、お客様にも大変好評でした。
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その模様を撮影したビデオ(抜粋)をご覧下さい。



3曲目よりは現代曲の演奏に入る為、金屏風、毛氈を取り払い、照明とカラフルな衣装に彩られた舞台になります。また今回は演奏会のテーマを「邦楽曲によるお国巡り」とし日本はもとよりヨーロッパまで足を伸ばして各地の地名や風物にちなんだ曲を選択演奏してみました。

先ずは「八木節スケルツォ」です。江戸信吾の編曲による民謡八木節で、尺八の独奏をスポットライトで照らしながら演奏は始まります。
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次の曲は「月見草の詩」宮田耕八朗作曲の小品ですが、この曲を太宰治作「富嶽百景」に絡めて演奏してみました。
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月見草と聞くと私は何故かこの「富嶽百景」の中の一節「富士には月見草がよく似合う」を連想してしまうのです。
静岡県は浜松市内の高校に通っていた時分、国語の教科書にこの作品は登場しました。
幼い頃より小さいながら見慣れた富士の山。静岡県の県歌、県のシンボルマークから小中高の校歌まで富士山は気高く崇高で美しく尊い物として扱われ、歌われてきました。それが何と教科書の教材ながら「富士は俗でだめだ...」等々の否定的な物の見方が綴られていたではありませんか!特に今回取り上げた月見草のくだりは富士よりその富士と立派に相対時している月見草がよかったと言っているのである。何かカルチャーショックを受けて価値観がガラガラと崩れていく自分があったような記憶があり、今もって月見草という言葉は富士山と同義語のような感覚なのです。
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この「月見草の詩」という曲とは何も関係ないのですが自分の想いを優先してのコラボとなりました。
朗読を福田津義子さんにお願いして、そのカルチャーショックを受けた部分を聞きながら演奏しました。ちょっとそのさわりをお聞き下さい。


5曲目は「青葉の賦」です。作曲者川崎絵都夫先生に直接指導を仰いだ曲です。仙台の薫りを少しでも醸し出すようバックの映像は美しく映されます。
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バックの映像を選択、パソコンで映し出す作業を会員の鈴木豊さんにお願いしました。また、箏の出しいれ舞台設置の責任者も兼ねており演奏会の要としてなくてはならない存在です。
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前半のプログラムが終わり、休憩となりました。

ロビーに人があふれ出します。三曲あさお名物「休憩のお茶菓子」がテーブルに山盛りに用意されています。しかしあっという間に無くなりました....
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後半は「飛騨によせる三つのバラード」飛騨にちなむ三つの言葉をモチーフに演奏は進みます。「歩荷」(強力さんのこと)「立円」(今で言うベビーサークル)「杉玉」(昔の酒屋の看板、酒から祭りをイメージ)
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7曲目は「恋のアランフェス」「シルクロード」のアレンジ曲2題。情熱の色ワインレッドのシャツを着た鈴木豊さん、そういえば還暦だとか...還暦には赤い.......
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8曲目には都山流本曲の「朝緑」、尺八重奏の調べを会場一杯に響かせます。
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裏では次の舞台設置の確認に余念がありません。
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箏の調絃チェック
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最後は大合奏曲「祭り幻想」でフィナーレを迎えます。
会場には作曲者で演奏指導もしていただいた川崎絵都夫先生も駆けつけくださり、会員一同緊張感を持ってハーモニーを奏でます。うん!上手く演奏出来ました。
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演奏終了後、松戸久義さんのお礼の挨拶、暖かな拍手に包まれて無事に終わった演奏会に会員一同ほっと安堵の一瞬。
また来年も大勢のお客様に喜んでもらえるような演奏会をと考えたかどうか、私は次の宴会のことしか考えていませんでした........。
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ご来場下さいました皆様本当にありがとうございました。




川崎絵都夫先生合奏指導 [三曲あさお]

定期演奏会直前となりまして、会員の練習にも熱が入ります。

朝緑.jpg都山流本曲「朝緑」練習

そんな中,今回演奏する「祭り幻想」「青葉の賦」の作曲者川崎絵都夫先生が三曲あさおの合奏指導に来てくれました。
先生のホームページに詳しく活動の様子が書かれていますが、東京芸大の作曲家を出ましてオーケストラの編曲、合唱曲,現代邦楽,舞台音楽など幅広く活躍されております。
http://www.asahi-net.or.jp/~kd2e-kwsk/
そんな大先生に?我々の拙い演奏を見てもらうのは心苦しいのですが、肩書きとは裏腹にとても気さくで楽しく、誰に対しても丁寧に指導してくれる得難い先生なのです。
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昔、私が専修大学三曲研究会の尺八を教えていた時、4年生の卒業演奏のために川崎先生に曲を委嘱をしたことがあります。出来上がった曲を抱えて合宿まで来ていただき、大変熱心に指導されておりました。その分かりやすい解説と学生に分け隔てなく接する先生の姿勢は後の私の音楽指導の方法や演奏そのものにまで影響を与えてくれました。是非その分かりやすい楽しい合奏指導を三曲あさおの会員にも見せてあげたくて、演奏会間近にもかかわらず企画してみたのです。
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午後1時練習会場へ到着した川崎先生を会員一同緊張の面持ちでお出迎えします。
挨拶の後簡単な自己紹介で「作曲家と言っても特別な才能がある訳ではなくて、皆さんが邦楽器を演奏するため一生懸命練習するのと同じで、勉強すれば誰でも作曲出来るようになるんですよ、だって僕は尺八吹けないから、尺八で演奏している人を見ればすごいなと思っちゃうもの、それと同じことなんですよ」といきなり懐に飛び込んできましたよ!
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祭り幻想の練習が始まっても川崎節は快調です。時折演奏を褒めながら「すごく良い演奏です、さらにこうするともっと良くなる。この場面での箏の役割は伴奏で、その2小節後が三絃が主役のメロディー、尺八音を抑えて.....」的確に修正を加えていきます。その様子を抜粋で3つ程以下にご紹介します。


こんな調子で2時間の指導はあっという間に過ぎてしまいまして、時間が足りないくらいでした。おしゃべりが楽しくて笑い声が絶えない合奏指導はまた、川崎先生が我々に緊張しないよう気を使ってくれたことにもよるのですが、「音楽を楽しみましょう!」「自分たちが楽しんで演奏することが、聞いてくれる人を楽しませる演奏会となるのです」というメッセージを巧みに織り込んで、私たち三曲あさお会員が本番で演奏する際の緊張をほぐすイメージトレーニングをしてくれたようです。
あっという間に楽しく時間は過ぎたのですが、先生がお帰りになった後で、何だかすごく体がだるかったのはやはり集中していて、疲れが後でどっと出たのかなと実感。
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それでもってもっと大変だったのは祭り幻想の後「青葉の賦」を見てもらった面々ですね。こちらは全員ではなく8人の小編成ですが、先生の指導が見たいので、残りの会員が取り囲むように練習を見ている中での合奏です。二重の緊張で笑い声も震えていたような........

さて!いよいよ明日は本番です。待ちに待ったこの日のために三曲あさおの1年はあります。
皆の心が一つになった川崎先生の指導の成果が実るよう頑張りたいと思います。
(いやいや、リラックスして....楽しんで......演奏をもっと良くしようと集中して........)川崎先生談

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三曲あさお創立20周年記念 [三曲あさお]

第6回勉強会
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早いもので麻生区近在の邦楽愛好家が集まって結成された三曲あさおが20周年を迎えました。
平成2年に産声を上げ、箏尺八4流派が全て揃って一緒に合奏を楽しもうと活動を始めたのが私35歳の時です。こんなに長い付き合いになるとは予想だにしておりませんで人生の後半は三曲あさおとともにあったようなものです。
麻生区という町を拠点に三曲あさおの邦楽合奏を発信し続けて、今やこの団体はかなり認知度も高くなってきました。街中で声をかけられたり、飲み屋の席で尺八の話をしていると三曲あさおの演奏に来た事がある人がいたりしました。
生田山田都山琴古4流派ミックスジュースのような、演奏の善し悪しは別として、邦楽合奏の楽しみを追求してきてそれなりに結果を残せてきたのは会員の皆さんの協力と努力のたまものですね。いづれは川崎市、神奈川県の貴重な文化団体となることも視野に入って来た???

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さて、今年の初めに三曲あさお恒例の勉強会と、創立20周年記念パーティーが開催されました。
勉強会はいつもは非公開で行われてきましたが、今回20周年記念でホールを借り公開演奏としてお客様を呼んでの開催となりました。
場所は新百合ケ丘駅近くの青葉幼稚園のホールです。14曲がエントリーし皆さん力演して盛り上がりました。

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そんな中で20周年の間に亡くなった会員もおり、追善の意をこめての演奏も披露されました。平成19年に亡くなった齋藤辰彦さん、昨年亡くなった初代会長の牧尾孝之助さん、お二人に御詠歌と尺八演奏が捧げられました。公開とはいえあまり宣伝はしなかったのですが、たくさんのご来場をいただき暖かい拍手が続きました。

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町田会長.jpg町田三曲協会会長:原曽風山さん

三曲あさお創立20周年記念パーティー

演奏終了後場所を新百合ケ丘駅前「ホテルモリノ」に移して三曲あさお創立20周年記念パーティーが始まりました。
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先ずは会長の私船明が会員の皆様への感謝とこれからも仲間として一緒に会を盛り上げましょうと挨拶後、来賓のかたがたのご祝辞をいただきました。将棋の斎田茂様にはうんちくに富んだお話しを、詩吟の佐藤伸風様には吟詠を会員の渡邊さんの伴奏で披露くださいました。町田三曲協会の原曽風山様には同じ邦楽の会員を抱える立場として貴重なアドバイスをいただきました。

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斎田茂:日本将棋連盟六段、公式指導員の資格を有し麻生区役所、登戸区役所にて毎週将棋の指導にあたっています。

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佐藤伸風:詩吟天風流天伸会会長、麻生邦楽友の会幹事

おいしい料理と飲み放題のお酒でかなり気持ち良くなってきたところで、アトラクションとしてクイズに答えて賞品をゲットする「邦楽イントロクイズ」が開始されました。古典現代混ぜて邦楽の曲から一部を聞かせて曲名を答えるゲームです。時々歌謡曲も混ざるので酩酊状態の人にはなかなか答えられません。やはり男性陣より女性陣のほうが多く正解を出しましたね!賞品が出ると聞くと女性は目がらんらんと.........
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最後はイントロクイズで出した歌謡曲を皆さんで合唱してパーティーはクライマックスを迎えました。
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さらに2次会......3次会......深夜の麻生の街の奥深く20周年記念飲み会は続きました。
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定期演奏会準備 [三曲あさお]

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三曲あさお第17回定期演奏会のお知らせ
三曲あさおの活動の締めくくりともいえる、定期演奏会が近づいてまいりました。
毎年毎年、演奏する曲を選定して、練習して、本番を迎える同じ事の繰り返しなのですが、練習でも本番でも新たな驚きや感動があり、(失敗も....)また次を目指して頑張りたくなります。古い古曲に限らず現代の作品も取り上げています、もう100曲以上演奏したのでしょうか。全員で合奏する曲だけでも「冬の一日」「シルクロード」「風土韻律」「津軽の四季」「オーロラ」「アクシス」「残光の彼方に」「秋麗の賦」「子供のための組曲」「ディベルティメント」などなど。どれも上手ではありませんでしたが楽しんだ事は間違いありません。

また、一人一人の力は微力でも皆で力を合わせれば立派な舞台となります。箏三味線に限らず邦楽のお稽古は先生との一対一の対面による技術習得が主で合奏を皆で楽しむという練習や演奏が無いように思います。流派を超えて皆で合奏しながら年1回の舞台目指して練習を重ねて行く三曲あさおのやり方は大変なこともありますが、一つの演奏のあり方を模索してきた結果が出てきているかなと思っております。
三曲あさおの演奏会に来場いただくお客様の数は年々増え続けています。毎年楽しみにしておりますというファン?も少なからずおり、邦楽の演奏を楽しんでいただいているようです。
思うにプロの演奏は高い技術力や突出したカリスマ性が魅力であり、アマチュアにはとても出来る事ではありませんが、舞台を構成してお客様を楽しませるという事に限ればプロもアマチュアもあまり差は無いように思います。いかにお客様に楽しんでいただくかは演奏する側の工夫次第で高いレベルの舞台が作れると確信している次第です。

今年は「邦楽曲によるお国巡り」と副題をつけましたので全部ではありませんが各曲それぞれ各地の風物、民謡、風景を織り込んでいます。舞台演出もビデオプロジェクターによる風景の投影や茶道のお点前を舞台上で実演したり、文学作品を朗読しながらの合奏と工夫を凝らしております。多くのご来場をお待ちしております。

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定期演奏会に皆様をご招待する案内状の準備風景です。
チラシと挨拶文を印刷して、封筒に入れていきます。そして会員の松戸さんの奥様が書の専門家で、毎年鮮やかな宛名を書いていただいています。「このような立派な字で自分の名前を書いてもらい感激です」とわざわざお礼の電話をいただく事も。もはや演奏会の一部となっています。

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今年の大合奏曲は川崎絵都夫作曲の「祭り幻想」を取り上げる事にしました。
この曲は「邦楽教育を推進する会」の委嘱による作品で、子供たちが邦楽器を使って合奏する為に書かれた比較的やさしい合奏曲です。とはいえ日本各地の民謡や祭りの音楽をテーマにしているため、皆知っているメロディーが次々に出てきます。音程やリズムがしっかりしていないと合奏の善し悪しが露呈してしまいます。そこで今年は練習の内容を充実させるために作曲による講習指導を企画しました。作曲者川崎絵都夫先生にあさお練習を見てもらい指導をいただくというものです。平均年齢が高く、各流派混在のアマチュア団体で上手ではありませんが....と恐る恐るお願いしたところ大変快く受諾いただき、あっさりと指導が決定しました。さーて5月2日の指導日目指して会員の練習は盛り上がりを見せています。
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プロとアマチュア、地唄と現代音楽などなど [尺八雑談]

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遅ればせながら本年もよろしくお願いいたします。

立春が過ぎたというのに昨今の寒さは体にこたえます。しかし、昔の暦をひも解くとまだ正月を迎えていないそうです。江戸時代まで使用されていた旧暦は月の運行を基に作成され、立春前後に正月が来るように設定されました。これは農業を産業の基幹としていた時代、農作業が一段落して最も暇な時期を正月としたということです。明治以降西洋のグレゴリオ暦を導入して旧暦を廃止したため(明治5年12月3日を明治6年1月1日に改めた)正月がずれてしまいました。そのため各地に今も1ヶ月遅れの旧正月を祝う行事が残っています。ちなみに今年の旧正月は2月14日(日)だそうで、梅も咲き始め暖かくなってくるので本当の意味で新春という感じですね。
http://www.ajnet.ne.jp/dairy/
旧暦(太陰太陽暦という)の作成は1ヶ月を月の運行で決め、1年を太陽の運行で決めるという複雑な操作をします。これでは月の1ヶ月(新月→満月→新月)が29〜30日と現在の1ヶ月より日が短く、1年が365日に足りません。そこで1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、それぞれをさらに6つに分けた24の期間をあらわす呼称として24節気(大寒、立春、啓蟄など)を設け、2〜3年ごとに1年を13ヶ月とする閏月を1ヶ月分入れました。こうして季節のずれが起きないようにしたとのことです。なんでこんな複雑で不合理な暦を作ったのかと現代から見れば思いますが、天空の月を見れば今日は月内の何日か分かることが必要だったのでしょう。満足な照明の無かった時代、新月や月が出ない夜の暗さは本当に何も見えない状態で夜出歩くには提灯があっても不便です。当時の照明「行灯」の明るさと満月の明るさは同じくらいだったそうで、月は最大の夜間照明だったのかと思います。そういえば盆踊りはお盆だから15日の満月の夜に踊ったのですね。

さて、昨年は尺八製作の他に尺八演奏会にも種々出かけました。やはり自宅にこもっていては尺八の音の響きはわかりません。ホールでの響きを聞く事も製作には何かしらプラスになると感じるのです。それとプロとアマチュアの尺八の音の響き方、演奏の演出、舞台の構成、などなど尺八の今後を考えるというとちょっと大げさですが参考になればと聞きに出かけた訳です。

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先ずは私の鈴慕会での先輩金野鈴道さんの尺八演奏会です。金野さんは松下電器のエリートサラリーマンとして長く勤務されていましたが、尺八プロ奏者としての夢断ちがたく、早期退職して演奏を磨きこの日を迎えたとのこと。春の海や地唄・本曲とオーソドックスな演目が並び、金野尺八の個性たっぷりの音色を堪能しました。しかし聞き慣れた演目はどうしても師の青木鈴慕先生との比較になって技術力表現力に今ひとつ冴えを感じなくなるのは残念でした。その意味ではまだ弟子であって音色の個性だけではアマチュアの域を脱しておらず、プロとして舞台で様々な音楽を表現してきたという積み重ねが無い限界を感じました。
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しかし、この演奏会は続きがあって、ギターとのジョイントコンサートが2ヶ月後ありまして「タイスの瞑想曲」「アルハンブラの思い出」「与作」など古今東西の名曲を集めての演奏や今回のコンサートに合わせて委嘱した新曲などを織り交ぜた楽しい音楽会でした。「糸竹」と名付けられたギター・尺八デュオは金野さんのもう一つの尺八の姿で、地元船橋のライブハウスではつとに有名な二人のようです。先の古典とは逆に金野さんの個性が演奏を引き立て、彼にしか表せない尺八の魅力を感じました。松下の社員時代よりジャズバンドと一緒にコンサートを重ね、地元でのライブに出たりとご本人が尺八を楽しんでいる気持ちそのままがこちらに伝わり良い演奏会でした。金野さんの音楽はこのようにあるべきと感じ、尺八の音色も鈴慕会的な鋭さよりも柔らかな表現に比重を置いた方が演奏が生きると思いました。今年以降もこの2通りの演奏会が続くそうで展開が楽しみではあります。
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会場では委嘱初演の楽譜を販売していました

次に芸大現役、卒業生を中心とした若手演奏家による地唄箏曲の演奏会「ー古典を研鑽する会ー第10回翔たけ日本音楽」が紀尾井ホールでありました。尺八演奏者にはジュニアがずらり!田辺頌山、川村泰山、田島直士、辻本公平各氏のご子息達、早稲田大学を卒業後芸大へ入り直したという黒田、渡辺両氏など気になる顔ぶれが並び、演奏の展開・表現に期待が高まります。

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公演は昼の部、夜の部2回で合計9曲が演奏され地唄演奏を堪能しました。若手とはいえプロの演奏家達です、隙のないしっかりとした技術でしかも表現豊かに演奏していました。中でも三絃を演奏していた澤村裕司さんの圧倒的な声量に
は驚きました。ただ大きな声ではなく歌詞をはっきりと発音していて聞き取り易く、今までの演奏家にない表現で感情豊かに歌い上げていたのは見事です。このような歌い方と表現は私にとっても新鮮で邦楽になじみの無い一般の人にも音楽として受け入れられると思いました。地唄に未来を感じたのです。
さて、尺八は自分の範疇ですからどうしても聞き耳を立ててしまいます。気になったのは琴古流の演奏者たちです。音が移る時の「スリ手」が過剰に入り過ぎてうるさく感じられました。出てくる人皆が同じようにスリ手を入れ、同じように「打って」「当たって」「収める」という琴古流に取っては基本的な手法を延々と繰り返すのです。尺八それ自体は非常にうまいのにこのワンパターンの演奏スタイルは残念でですね。先の澤村さんのように「ああ、こういう表現方法もあるんだ」という発送の転換が必要かな。地唄箏曲は本来、歌に三絃・箏の手付けをした歌曲であり、尺八が入った演奏を前提に作曲されたものではないのですから、三曲合奏における尺八吹奏には効果を考えて構成をしなくてはならないと思う次第です。また、三絃箏の流れとは全く関係なく、独り相撲よろしく吹きまくる尺八も下品ですね。
その意味では都山流のお二人は本来都山流には無い琴古流の手法を入れたり、歌の強弱に合わせた表現、流れに乗ったリズム感のある演奏などが好感で、さらに流派の「癖」を感じさせない流麗さもあったように思いました。
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尺八製作者として時に気になるのは音の出しにくさを感じさせる音質でしたね。どなたかとは言いませんが歌口か本体に欠陥がある尺八をお持ちかなと老婆心ながら記しておきます。

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今年に入って1/28にサントリーホールにて山本邦山プロデュースの作品発表会がありました。これは(社)日本作曲家協議会が「日本の作曲家」と題して主催する演奏会で1974年から続いているそうです。協議会会長(小林亜星)のあいさつには「作曲家によって創られた音楽は、優れた演奏家によって実際の響きとして発表されることで、初めて聴き手との具体的な触れ合いが生まれます。日本作曲家協議会では、毎年会員の室内楽作品を楽譜制作してまいりました。今年度は第1夜(1/28)は尺八を使った室内楽6曲と第2夜(1/29)は第37回楽譜制作作品発表会として7曲を国内外で活躍する素晴らしい演奏家による演奏をお楽しみ下さい」とありました。
演奏は山本邦山始め息子娘を含めたファミリーと門下の川村泰山、野村峰山によるもので、全体に抽象的で自由リズムのゆっくりとした演奏がほとんどでした。メロディーらしいものが何も出て来ない音の羅列なのでちょっと聞く分には訳の分からない音楽です。しかし一般の人に尺八の虚無僧音楽を聞かせたり、地唄を延々と聞かせれば同じ感想を持つと思いますから、これはこの世界に身を任せ、何度も聞くか、自身で演奏してみて曲想を作り上げて行く以外に作曲の意図を理解する方法はないと思いましたね。
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上記ふたつのコンサートとは180度違う精神世界の表現に戸惑いましたが、尺八の音楽に果敢に挑むその実験精神は評価出来ると思いました。休憩中受付に今回の楽譜が販売されていたのでちらっと見てみました。全部は見ていないので何とも言えませんが、その昔、諸井誠や入野義郎などという現代音楽の作曲家達の尺八を扱った楽譜が小節線が無く、五線譜というより矢印やミミズののたうつような線で音程を表現してあったのに比べ、整然と綴られた五線譜だったのには意外でした。すぐにでも演奏出来そうな感じでしたが、いざこれを表現するには技術的にも精神的にも私にはハードル高そうな音楽ですね。やっぱり演歌やポップスのほうが楽しくていいなあ。
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聞き終わって思ったのは、作曲された曲が名曲とも限らないのでこの演奏会で演奏されたきり二度と演奏されない事もありえます。そのような曲がおそらく過去にも何百何千とあり、それらを踏み台にして一つの名曲が生まれるのでしょうか........。尺八の江戸時代より伝わる虚無僧音楽にもその重みを感じさせるものがあります。次世代に伝える意義を噛み締めたコンサートでもありました。
ただ、今回は山本邦山ほか演奏者が都山流の方々だったのですが、これを琴古流の演奏者(青木鈴慕、三橋貴風、善養寺啓介など)が演奏したらどのような表現になっただろうか、ぜひとも聞いてみたいものです。

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最後は邦楽合奏団「翔」(はばたき)の第31回定期演奏会です。私自身麻生区で同じような合奏によるコンサートを開いているので最後はアマチュアの演奏についてお話ししましょう。この「翔」はおそらく都内では一番古い合奏団でしょうか。代表の岩橋さんは私の母校明治大学三曲研究部の4年先輩で関東学生三曲連盟の委員長でもありました。その関係で卒業後、仲間を募って立ち上げたこの団体は言わば社会人野球のような存在で、サラリーマンとして仕事をするかたわら練習に励み、合奏曲を皆で練り上げ演奏会に出すという作業を積み重ねてきました。
岩橋さん.jpg代表の岩橋さん

普通、邦楽の世界に入門すると邦楽の練習合奏は古曲や流派社中の曲に限られますが、学生サークルで育った我々はその古曲とともに、他社中の曲や洋楽の作曲家が作曲した合奏曲も演奏会のプログラムに取り入れるので、多方面のジャンルの音楽に触れる機会があります。大学によっては練習方法もブラスバンドやオーケストラと同じようなリズムやハーモニーの練習を課す所もあります。それゆえに個人の技術を磨く先生対生徒の対面練習に終始する一般の邦楽練習より箏、三絃との合奏機会がはるかに多く、より実践的な練習に恵まれていると言えます。そういう意味では一般の人達は先生の管理下に置かれるため自身で合奏を考え、自由に合奏を検証する時間も無く、ただ先生の言いなりになってむなしく時を費やしていると言わざるを得ません。
夏夢.jpg合奏曲「夏夢」

もちろん学生も先生の指導は受けますが、自分達で考え、舞台で失敗して成長して行く時間が無尽蔵にあり、4年間で驚くほど上手になって、卒業後プロになってしまう人も出る事は承知の通りです。
このように合奏の楽しみを知ってしまうと、卒業後プロにはならなくても、継続して合奏を続けたいと思うのは当然の成り行きで、気のあったもの同士でグループを組んだり、先輩達が立ち上げた合奏団へ入団する事になるのです。現在都内には「翔」「織座」「21世紀」「来音」「十哲」などなど様々な団体グループが存在しています。
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専大三曲の教え子渡部君、今回新規に我が工房の8寸、6寸を購入しての舞台です。


演奏する曲目はほとんど現代曲になりますが、難しい曲もありプロではありませんので、必ずしも名演とはいきませんが
一人では表現しきれない多人数での音の厚みと合奏のパワーが客席を感動させることはしばしばあります。先の金野さんの例で申しましたが自分達が合奏を楽しむ事が大事なのです。「楽しんで楽しんで、その溢れ出たものを聞かせるのがコンサートである」と、NHK邦楽技能者育成会の講師だった藤井凡大先生は言いました。自分達で構成する舞台も凝り方によっては楽しい演出となってお客様を喜ばせます。お客様がお客様を呼び客席が埋まっていくと拍手は大きくなり、相乗効果で演奏も盛り上がります。聞いてくれるお客様を楽しませるためにコンサートはあります。邦楽のおさらい会的演奏やプロの技を見せる演奏会とは一線を画して、魅せる邦楽を演出するのがアマチュアの邦楽コンサートかなと思います。
福田君.jpg明治三曲後輩の福田君笠原さん.jpg専大三曲笠原さん飛気さん.jpg専大三曲飛気さん吉成さん.jpg専大三曲吉成さん


三曲あさおでも今年5月8日(土)麻生市民館大ホールで第17回定期演奏会を開催します。今回もいろいろと企画を練って楽しい邦楽を魅せます。乞うご期待!

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三曲研究部創部50周年記念演奏会のお知らせ [明治大学三曲研究部]

明治大学三曲研究部は来年創部50周年を迎えます。
昭和35年6月クラブ誕生以来半世紀、先輩から後輩へ連綿と受け継がれてきた邦楽器を軸とする活動が一つの節目を迎えるのです。

おそらく入部した人達のほとんどが邦楽器(箏・三味線・尺八)とは縁のない生活を送り、見たことも触ったことも無い人達でしたでしょう。そして4年間のクラブ活動を通じて邦楽器に精通し、演奏出来るようになって卒業して行きました。日本全国の大学には同じようなクラブがあり、同じように歴史を重ねて多くのOBOGを送り出してきたことでしょう。私のようにその後の人生の仕事にしてしまった人も多く見られます。そういう意味では大学の邦楽クラブは戦後の邦楽界の底辺拡大に多いに貢献してきたと言えます。
そういう大学のクラブの中でも明治大学は「地唄の明治」といわれるほど古典を中心に活動を重ね、いまや関東の大学の中でもその実力は屈指のものと評されるまでになっています。実力だけでなくクラブ内の人間関係や活動の内容が良好であったからこそ50年の歳月を続けることが出来たのでしょう。そのようなクラブに在籍していたことを誇りに思う昨今ではあります。
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そしてこの50年の締めくくりに記念行事が開催されることになり来年6月12日(土)と決まりました。開催にあたって実行委員会が今年設置され準備を重ねてきました。
明治役員会.jpg実行委員会

私は「記念演奏会」の担当として連絡や実行案作りに参加させてもらいました。会場はサントリーホールが使用出来ることになり、これはえらい事になったと参加者の募集やら演奏会の骨子やらをまとめ、尺八講師の佐野達也先生、箏・三絃講師の金津千重子先生とも相談して50周年に恥じない演奏会を目指してきました。卒業後楽器を継続して楽しんでいるOBOGは少なく、参加者の多くは卒業間もない人達に集中していますが、講師の先生との共演もあり、ご覧のような立派なチラシも出来ました。OBOGを問わず一般の多くの方々にもご来場いただけたらと願っております。

他には名簿作成部門、記念誌作成部門、会計、総合企画(記念式典)など実行委員長の宇田川さん、副委員長の竹川君(現役幹事長)のもとそれぞれに進行中です。
名簿作成では住所不明の探索より、OB会に参加したくないという人がいることに少なからず驚きを感じました。長い年月には必ずしも良好な人間関係があるとは限りませんからしょうがないですね。
記念誌ではクラブの沿革とともに各代の幹事長談話や年代ごとのエピソードを載せるとあって、懐かしい写真や話が集まっていました。私たちの代での合宿風景と合奏練習をご覧下さい。
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合奏は「三絃協奏曲」学生初演かと思われます。また、定期演奏会のサブパンフレットも出てきました。演奏についてのエピソードや研究などをまとめた分厚いものでガリ版刷りの懐かしいものです。今のパソコン全盛時代のしかも各自プリンターまで持っているなんて考えられない古き良き時代ですね。
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会計からは記念事業特別基金募集の案内が会員へ出されました。少しでもご協力いただき、記念事業を成功させましょう!
記念式典は大学交流会館である「紫紺館」で演奏会の夜開催されます。初期の講師の先生やクラブ顧問がご招待されOBOG現役が一同に会してのパーティーになる予定です。


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さて、こうした作業の中、現役の第48回定期演奏会が11月14日亀戸駅前の亀戸文化センターカメリアホールで開催されました。受付できれいな和服姿の現役生にパンフレットを受け取り席に着きます。時刻は午後3時、これから午後8時過ぎまでの長丁場になります。毎年のことながらちょっと長いですね....。でも一人一人の演奏がたっぷり聞けることは良いことかもしれません.部員の数がそれほど多く活気がある証明でもありますね。

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今回は来年の50周年記念演奏会の宣伝もありチラシを受付で配布、休憩中に委員長の宇田川さんの挨拶もありました。写真は幹事長竹川君の挨拶です。ユーモアたっぷりにクラブの紹介をしておりました。好感持てますね。
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演奏が終わって、クラブ顧問の古屋野先生、OB副会長の岩橋さんと近くの居酒屋で飲み会となりました。50周年も含めていろいろと現役の話、邦楽の話など話題は尽きず亀戸の夜は更けて行きました。


第6回勉強会のお知らせ [三曲あさお]

来年1月10日(日)に三曲あさお恒例の第6回勉強会が開催されます。定期演奏会とは別に普段取り上げない曲や難しい曲に挑戦するいわば腕試しの会です。
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今回エントリーされた曲は14曲、地唄では「萩の露」「末の契り」「嵯峨の秋」現代曲では川崎絵都夫「青葉の賦」菊重清峰「竹紫玄明」などがあります。宮田耕八朗の曲では尺八のウルトラテクニックがある「草笛の頃」、ほうせんかにまつわる歌を三つ集めた「ほうせんか三題」がちょっと面白い。
尺八重奏ではネプチューン作曲の三重奏「青風」、五重奏にアレンジされた山木幸三郎編曲「アランフェス協奏曲」がどこまで合奏をまとめられるか?
御詠歌もあります。以前ご紹介した「南こうせつ」作曲の「まごころに生きる」という曹洞宗梅花流の現代御詠歌と真言宗密厳流の「紫雲」を尺八で演奏するというものです。これは先々月亡くなられた牧尾さんを偲んでの追善曲となります。

前回までは非公開で文字通り会員同士の勉強会だったのですが、平成2年に結成された三曲あさおが来年でちょうど20周年を迎えるため、記念イベントとして会場を借りて公開演奏会としました。

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その会場が川崎青葉幼稚園の2階ホールというちょっとかわいらしい所となりました。新百合ケ丘駅から徒歩10分あまりのところにあるこの幼稚園は土日や祝日など休園日に地元の麻生管弦楽団や合唱サークルに練習場所としてホールや教室を解放しており、園長さんとあさお会員が知り合いだったったこともあって今回特別に場所を提供していただきました。舞台は園児が並ぶスペース分ですので少し狭いですが100人以上は入れる客席が余裕です。
あまり練習時間が取れなくて拙い演奏ですが、お時間ございましたらどうぞご来場下さい。

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