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尺八の簡単割れ止めと音程調節機能付き尺八 [尺八雑談]

このところ忙しくてブログ更新やチェックを怠っておりどうもいけません。
返事兼更新記事を書きます。
書き込みいただいた湊山さんへ具体的な割れの簡単対処法と音程調整尺八などをご紹介いたします。

割れの予防には常にビニール袋に入れて持ち歩く、冬などの季節は急激な温度変化を避けるなど保護して保管するにしても、演奏する時はむき出しの状態ですから尺八本体に何か巻き付けて割れないようにするのが一番ですね。
最初から割れ巻きを施してきれいに籐巻きをするのがベストですが、素人では難しいし、専門家に頼むと高いしで大変です。テグス糸も巻くのが結構難しいです。そこで簡単で見た目も丁寧に巻けば不自然ではない方法をお教えしましょう。

割れ補修①.jpg
実はビニールテープをきつく巻くだけなのです。写真は黄色いテープですが、黒や茶色など尺八に巻いて遠目には漆のように見えるテープを使用します。
巻く場所を決め、均等に間隔を空けて巻いていきます。ポイントは切れる寸前まで強く引っ張りながら巻き付けるのです。そして最低5回以上同じ太さに揃えながら重ねていきます。ごらんの通り割れがぴったりと閉じました。(巻き方が雑ですみません、何度か練習して下さい)
割れ補修②.jpg割れ補修③.jpg割れ補修④.jpg割れ補修⑤.jpg

このように割れる前に事前に巻いておくと防止になります。完全ではありませんが亀裂が大きく開くのを防ぐことはできます。
事前に巻く時は、歌口のすぐ下(3cmほど間隔開けて2カ所巻いておくと丈夫)、5孔(裏穴)の上の節の上下、下管では1〜2孔間にそれぞれ巻きます。

音程調節機能付き尺八
全体写真.jpg部分写真①.jpg

季節により尺八の音程が上下し、演奏に不自由を感じるのは皆さん同じようです。今年の猛暑は私も尺八製作にも支障が出るほど音程が高く出るので音程調整はしんどかったですね。そして「音程を下げてくれ」という修理調整の依頼が多かったのも今年の特徴ではありました。
フルートのように頭部管をスライドさせて全長を伸縮させる機能があればかなり悩みは解消するのですが。

昔からフルートのように音程調整機能が付いた尺八は考えられていたようで、写真のように上管の途中にホゾを入れてスライドさせて音程を上下させていたようです。私も以前このようなタイプを製作したことがあります。

音程調整①.jpg音程調整②.jpg

がしかし、フルートはかなり薄い金属のホゾがスライドするので管内の径に影響は出ませんし、尺八の内径構造のようにテーパーがついていなくてストレートなため、全体の音程がかなり均等に上下出来る構造のようです。
尺八の場合もホゾを薄い金属で作製すれば内径への影響が少なくて済みそうですが、自然の植物である竹を利用するので太さがいろいろあり、一定の内径構造に出来ないため、削れない金属を最初から嵌め込むと微調整が難しくなることが予想されます。
プラスチックや木管のように同じ形状で大量生産されるものには有効かと思われます。(良く鳴ればですが)
普通の竹製のホゾは強度を考えると厚さ3mm以上は必要でそのような厚さを持ったホゾを2〜3mmスライドさせるだけで内径に大きな溝が出来て、鳴りに影響が出る場合があります。もし作るとすれば写真のような位置ではなく歌口の真下が一番影響が少ないと思われます。

しかし製作してみるとフルート違って内径構造がかなり複雑なためか、均等に音程が上下せずに、歌口近い5孔の音程が一番大きく上下し、以下4321孔と上下の幅が小さくなっていきます。1本しか製作していませんので確かなことは分かりませんがスライド機能を有効にする為の内径構造が必要なのかもしれません。

音程調整③.jpg

それなので、写真の長い方の尺八(2尺)のように3カ所のホゾを設け、一番上で4、5孔 2番目で3、2孔 3番目で1孔を調節するようにすればかなり正確に各音を調節することが出来ます。それでもスライドさせればホゾの隙間で溝が出来ますからホゾと同じ太さのドーナッツ形リングを数種類用意し、音程調節で出来た隙間を埋めるようにすれば完璧でしょう。

でも昔作製して結局使わなかったのはなぜでしょうか?
野外や体育館などで演奏する場合以外はホールなど空調設備の整った環境では温度も季節に関係なく一定なので、ある程度メリカリで対応出来るし、ピアノのように一定の音程に調律されてある楽器と演奏するのでなければ、箏などは2〜3Hzの上下などすぐに対応してくれる楽器だからでしょうか。

8孔写真.jpg焼き印.jpg

この8寸管はかなり古い尺八で8孔尺八です。ツのメリ、中メリに対応出来るよう小指でE♭、薬指でE、中指でF を出します。戦前の演歌尺八のことを書いた記事にこの8孔尺八のことが紹介されていました。しかもこの尺八は加えて音程調節機能がついているのですから、昔の尺八吹きの先達は進んでいたのですね!







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コメント 3

湊山

きわめて詳細なご返答を頂き、どうも、ありがとうございます。

割れ止めの件、早速透明ビニールテープでやってみるつもりです。
これで、本番まで安心できます。

ピッチの調整の件ですが、尺八の場合はきわめて難しい事、よく分かりました。
全体のバランスが崩れるということだと、どうしようもないですね。
しかし、想像以上に微妙なものなのですね。

申し遅れましたが、六寸は、一昨年、千葉の即売会で購入した、紫雲銘(枯竹のようです) を、七孔にして使っております。大変満足しております。


by 湊山 (2010-10-11 07:58) 

船明啓耳

私の作製した1尺6寸管をご使用されているということで誠にありがとうございます。販売先とは別に何かご使用に際してご不便や不具合などございましたら遠慮なく工房までお申し付け下さい。性能や音程に関しましては無料で再調整させていただいております。

割れ巻きの件ではビニールテープの巻きにもかかわらず,割れが出る場合がありますので保管等充分な予防は必要かと思います。割れてしまった後、テープを巻いて締めておいても割れの強度によっては開く場合もありますので早期の修理依頼をしたほうが無難です。

また、大きく開いた割れは万力などで締めないで下さい。
乾燥や気温の上下で竹が収縮するため割れるので湿度と適温を与えれば竹は自然にもとの状態に戻ります。
例えばお風呂場のような湿度の高い場所に2〜3日尺八を置くとか、発泡スチロールの箱に水を張り台を置いて尺八を入れ密閉するとかするのです。濡れタオルで尺八を巻くのは半日くらいなら良いのですがあまり長く巻いておくと急激に多量の湿度が入り竹と管内の「地」が剥離する原因になりますし、竹が変色して汚くなることもあるのでお勧めしません。
たとえ管内が外から見えるほど大きく割れが開いても、割れた直後であれば上記の方法でほぼ完全に割れが閉じ、元の状態に戻ります。
それからテープ等を巻いておけばしばらくは吹奏可能な状態を保つことが出来ます。

音程は奏者によりかなり違って出ますのでいろいろな場合を想定して慎重にお話ししております。なので奏者によっては記事に書いた程、性能他影響無いと言う人もおります。

でも季節を通してちょうど良い音程を自分なりに確定する試行錯誤は必要なようですので、もしよろしければ音程調整のお手伝いや鳴り、吹奏に関してのご質問等工房にいらっしゃっていただければより詳しくお応え出来ると思います。



by 船明啓耳 (2010-10-12 00:27) 

NO NAME

実験
by NO NAME (2011-01-02 18:15) 

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