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尺八修理その9 尺八管内構造と調整方法 [今日の工房]

都山流の「ハ」琴古流の「り」の調整についてお話ししましょう。
前回説明で用いました内径グラフで症状や調整ポイントを説明します。

内径説明グラフ.cwk-(DR).jpg
先ず、図1のように歌口入り口の径が大きい場合を考えてみましょう。この形状は歌口の形で判別がつきやすくまた、手が届く範囲なので対処方法が手早く出来るでしょう。写真で歌口径の大きさを比較しました。右側の尺八は親指がスッポリ入る程大きく最大径は23mmあります。こうなるとこの歌口に合う人、慣れることが出来る人は限られます。唇を乗せた時に歌口が遠いのでモジモジと歌口を探ることになります。
歌口径①.jpg
グラフでは理想の曲線より入り口の部分のみが大きくカーブを描いているので大甲音が低めな音程になったり、ハ(リ)が上ずったような音になります。これは歌口より、ハ(リ)の指穴までの半分の位置が、調整ポイントなので歌口近辺が広いと相対的にこの部分の体積が狭いことになり音程が上ずるようになるためです。、ハ(リ)に限らず乙音のヒハチレ(ヒの五リチレ)全体に上ずる場合もあります。
歌口径②.jpg歌口径③.jpg
修正としては先ず歌口の入り口径を縮めてやる必要があります。写真のようにビニールテープで入口径の縦を狭くしてやります。よく「息返し」とかいう言われ方をしますね。息がこのテープの下で回転して音が良く出るなんていう解説を聞いたことがありますが、何のことはない、入り口径が縮まって歌口エッジ部分に唇が近づくことが出来るようになった結果「吹きやすく」なったのです。
さて歌口を調整したら内径に移ります。尺八製作で「試し紙」という調整ポイントを探るやり方をお教えしましょう。

試し紙①.jpg試し紙②.jpg試し紙③.jpg試し紙④.jpg試し紙⑤.jpg
写真のように線引きと同じくらいの幅の新聞紙を適度な長さに切って2枚重ねます。二つに折れば4枚重ねです。水に濡らして管内のポイントに置くわけです。厚さ長さはその都度調整内容により変わります。極端に大きく厚くしてみて徐々に薄く小さくしていくとちょうど良いところで音に出るようです。
このように濡らした新聞紙で各場所を探りながら埋めるポイント決めますが,逆に削ることもありえます。この入り口だけなら埋めるだけのほうが手間はかかりません。
しかし図2のようにハ(リ)のポイントその場所が狭かったり、時に管内全体に狭い径の場合は、さらに狭くするようになるので音は上ずらない代わりに詰まったようになる場合があります。その時は削る方が解決になります。
図3は、ハ(リ)のポイントより下全体が広い場合です。このような内径の尺八は、ハ(リ)はもちろん上ずりますが乙のレツの音程が下がり気味になり筒音が安定しない傾向にあります。試し紙で対処する時は下管全体に紙を置いてもいいのですが、写真のように上管4孔下と下管2孔周辺に置いてみましょう。かなり安定して来ると思います。
試し紙⑥.jpg
※分かりやすいように外側に新聞紙を貼ってみせています(念のため)

グラフではかなり大きく管内の径を書いてありますが実際は0.2〜0.3mmくらいで広い場合が多く、紙の位置をあちこち動かしていくと、かなり狭い範囲で効率よく響きが変わることがあるのです。

尺八管内が磨き立てられていてピカピカの尺八があります、一方地無し管のように管内は節が残っていて凸凹な尺八があります。1尺8寸前後のサイズの尺八では管内のポイントが効率よく形作られていれば、どちらの作り方でも鳴り方はほとんど変わらない尺八が出来ます(音質は微妙に違いますが)。従って調整方法も基本的には皆同じと言えます。狭い広いでオクターブの音程に違いが出る、各ポイントの狭い広いで鳴り方が変わる、その現象をじっくりと聞き分ける訓練が大事なのです。もちろん吹奏能力(演奏能力)も必要ですが....。

乙のレのポイントに貼る
試し紙⑦.jpg

甲のチのポイントに貼る
試し紙⑧.jpg




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