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いろいろな尺八 [今日の工房]

いろいろな尺八
いろいろな尺八を見てきました。工房へ持ち込まれた尺八は日本全国の製管師が作製した苦労と創意工夫のたまものです。見事な外観とすばらしい鳴りの名品から安売り尺八まで機械で自動的に作った物は無く、皆1本ずつ手作業で形作られたからには、製作者の思いが込められていると思います。良い楽器を提供しよう、安価で誰もが購入できる尺八を提供しよう、そしてどんな人が購入しようと大事に長く使って欲しいと願いつつ製作していると思います。また、私の工房へ調整で持ち込まれる尺八は依頼者にとって何かしら欠点や不具合があるからなのですが、依頼者は一生懸命に吹いて慣れて音を出そうとしたのでしょう、そんな努力の跡が尺八に刻み込まれています。長く修理調整をやってきてもう30年近くになりますか、請け負った尺八は5千本を越えたでしょう。
たかが尺八されど尺八、これで飯を食ってる訳で、ありがたいと感謝しつつ依頼者はもちろん製作者にもそして尺八本体にも敬意をもって接していきたいと思います。

さて、驚いたこと,困ったこと、こんな尺八はいかが?という話題です。

「しの尺八」
しの尺八1.jpgしの尺八2.jpg
民謡のお客様がお持ちになっておりまして、歌口が小さいので吹きにくいから修正して下さいとのこと。おっと!これは初めて見る尺八?篠笛?
民謡では尺八も篠笛も吹ける方がいろいろな曲に対応できるから篠笛を習っておいた方が良いのですが、吹くことは出来るとしても7つの指穴運指がドレミになっていたりして戸惑いますね。そこで篠笛を縦にして尺八の歌口を取り付け、ロツレチの運指にしたのがこの「しの尺八」です。指穴が8つありまして下の穴からツメリ(ツ半音)、ツ中メリ、ツ、レ、チ、リメリ(ハ半音)、リ(ハ)、イ(ヒ)となっており、ツメリとツ中メリの二つが完備されているので便利ですが、ツの運指は中指を開けることになりちょっと戸惑います。音は当然篠笛の音ですが、とにかく歌口が小さくて慣れるのが大変!これなら篠笛を練習した方が早いかなあ……..。
しの尺八2本.jpgしの尺八3.jpg

「困った尺八」
地材料1.jpg
左は通常の漆「地」右がプラスチックの「地」

鳴りの改善を依頼され管内を削ることになったのですが、とにかく堅い!!ガリ棒でも歯が立たない。なんじゃこりゃとノミで削ってみると鰹節のような削り滓がポロポロ。プラスチック樹脂を充填して作製した量産品でした。作り方としては内径を型取った棒を広く削った管内に入れ、隙間に樹脂を流し込んで固まったら棒を抜くという「型抜き」製法ですね。現在安価で販売されている尺八は全てこれだと思います。棒が中心に沿ってバランス良く置かれていると結構良く鳴る尺八が出来るのですが、曲がっている竹材や偏って棒が挿入されると鳴りが良くありません。しかも固まると堅いので修正は出来ずそのまま販売……。樹脂を使う製法では管内一杯に充填した樹脂を特殊な旋盤でくり抜く「削りだし」製法もあり、こちらの尺八は結構バラツキが無いみたい……。これを調整依頼された時は泣きたくなりますね。電動ドリルを使い樹脂を削り落としてから改めて漆の「地」を入れて作り直しです。あーあ、やんなちゃった!
地材料3.jpg地材料4.jpg
堅い樹脂とは正反対、ボロボロの「地」もありました。表面の漆は固まっているのですがガリ棒やヤスリで削り出すと、ボロボロと崩れるように「地」が剥離して落ちてきます。漆ではない凝固剤を使用したり、漆の含有が少ない地の粉だけで固めたりして製作したのですね。漆より早く固まるので製作日数を稼げるのが利点でしょうか。しかし脆いのですよ。そーと削って正規の「地」で埋めても下の柔らかい凝固剤と接着せず、調律ができません。これもぜーんぶ落として「地」の入れ直し……トホホ。

「お経尺八」
お経1.jpgお経.jpg
レーザー加工で尺八の表面に経典を彫ってあります。プリントアウトしても、パソコンで作製した字や絵をデータCDに入れても、持っていけばそのままどんな素材にでも刻印してくれるそうです。

「三つ折れ尺八」
三つ折れ1.jpg三つ折れ②.jpg
これは私の工房で作製した物。A管(2尺4寸)なのですが5孔の上と1〜2孔間にジョイントがあります。長い尺八なので歌口角度の調節と1孔の位置が動くので薬指の位置を奏者に合わせることが出来ます。この尺八は中指が開いている6孔尺八です。通常ここに作られるジョイントが無いので中指穴が自由に設定できます。
作製は面倒ですがお客様には大好評!(まだ1本しか製作してませんが)

日々尺八は進化します。
このブログをご覧の皆様、この他に何かなるほどというアイデアなどございましたらご紹介下さいませ。




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