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尺八修理その8 割れ対策 [今日の工房]

割れ修理
本格的な冬に突入しまして、これから尺八にとって恐いのは「割れ」ですね。
事実冬になると修理の半分は割れ修理の依頼となるのでもわかります。
割れの原因としては乾燥があげられますが、それよりも寒暖の差が激しい所に放置したというのが多いようです。暖房のある部屋に置いて、寝る時には暖房を切ってしまうため朝方になって部屋が冷えて尺八がとても冷たくなってしまう、というような状態を連続で続けると竹が収縮膨張を繰り返すので耐えきれず割れるという過程ですね。早春の時期、暖かくなってきたその日の翌日突然10度以上も気温が下がったときなども要注意です。
また、購入して間がない新しい竹などは工房の湿度、温度に気を使った環境から急に何も保護されない環境になるため割れる確率が高くなるのはよく言われます。しかしながら30年も使用した真っ黒になった尺八、戦前の古管銘管などがある日突然割れるということがあります。これは予防のしようがありませんね。

予防としてはビニールの袋に常時入れておく、寒暖の差が無いよう心がける、保管する際には尺八が数本入るくらいの大きめの密閉容器(タッパーのような)に水を張るか紙おむつのような水分を吸収する素材に水を含ませて入れておき、その中に入れておきます。油を表面に塗る方もいますがあまり頻繁に塗ると油が飽和状態になってヌルヌルして演奏に支障が出るので1ヶ月に1度くらい塗るだけでいいでしょう。

割れ修理前①.jpg割れ修理前②.jpg割れ修理前③.jpg

さて、割れてしまったらどうしましょう?
表面に浅く小さな割れであればアロンアルファなどの瞬間接着剤を塗って様子を見ましょう。この時点ですぐに修理に出せば軽症で済みます。テグス糸で巻くのも方法ですが緩まないように巻くのは技術が必要です。簡単なのはビニールテープ(絶縁テープ)を思い切り引っ張りながら3重くらいに巻き付けると割れの予防ととりあえずの割れ止めになります。

割れ修理前④.jpg割れ修理前⑥.jpg割れ修理前⑤.jpg

そしてばっくり!と割れてしまった尺八を見ると、心臓に悪いというか自分が悪くないと思いつつも変な罪悪感にさいなまされていやーな気分になります。即修理に出さないと演奏が出来ませんさてどうしましょう?こんな時あわてずに先ずは堅く絞った濡れタオルに半日巻いておきます。すると見事に割れ目が見えなくなるまで元に戻ってしまいます。湿度を与えて竹の繊維を膨張させるのです。そして「管内の割れ目」に沿ってアロンアルファを流し込むとスーと割れ目に吸収されますのでそのまま続けて飽和状態になるまで流しこんで横に寝かせ10分程放置すると割れが管内で固まり1〜2ヶ月はこれで保ちます。私の実験では最長3年割れが止まり、再度割れたのは最初の場所ではなく他の場所でした。ただしこれは割れてからなるべく早い時期に処置しないと奇麗に収縮しないし接着剤の効果も半減します。

割れ修理前⑦.jpg
この尺八の管内には大きく亀裂が残っているので、この場合は一度亀裂を埋める必要がある

このように大きく割れても竹の状態をもとに戻すような処置をすれば性能はほとんど変わりません。でもなるべく早く専門家の修理に出しましょうね!ここで割れ修理に出す時の注意、割れを押さえるため糸を巻くのですが、糸巻きの溝を深く切ると管内に圧力がかかり内径が変形しますので、なるべく溝は浅くするよう依頼しましょう。(本当は表面に巻くのが一番力がかかり、内径に影響しない)管内を覗いて割れ巻きの部分が極端に波打っている時は要注意です。(多少は波打ちますが....)


昔は割れると性能が著しく損なわれ、「買い替えしかない」と脅されて保管に気を使ったよですが、それはもちろんとして上記のように割れ補修の際に管内の形状を変えないように修復すればよいだけなのです。また、製作者にとっては修理が面倒なのでどうやら買い替え促進の口車のようです。また割れ巻き1巻きにつき4万円などというとんでもない請求をする輩もいて、割れ修理には悪いイメージがつきまとってもいるようです。
割れないことに越したことはありませんが割れは一番起こりやすく一番演奏に支障がでるトラブルです。竹は割れるものと認識してその対処法を知っておいてほしいなと思う次第です。

割れ修理完成①.jpg割れ修理完成③.jpg割れ修理完成②.jpg


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